1015.水晶 シート状聚形3 Quartz Aggrigate 3 (ブルガリア産) |
No.1013、No.1014
に続けて。「シート状聚形」という表現で私が示したかったことは、
・熱水性の産状と思しい水晶脈では、しばしば不定形の(自形の不明瞭な)白濁したシート状の脈・層の架橋が見られ、それは水晶晶出の比較的初期の段階で短期間のうちに発達したと思しいこと
・シート状の架橋はしばしば明瞭な自形結晶の苗床となって、その両面に無数の単結晶形を生じていること
・シート表面から成長した自形結晶の(柱軸の)方向は概ねランダムであるが、同じ方向性を持ついくつかのグループが認められる場合があること
・シートの厚さが薄かったりポーラス(多孔・多巣質)であるときは、両面に生じた自形結晶の方向性が(いくつかのグループに)揃っていたり、一個の両錐形状を持っていたりすること
、である。
このページの標本もその一例。シートの内側の領域では自形結晶の方向はランダム性が高いが、縁の領域ではよく整った両錐形がシートのうねりに沿って亜平行的に連晶していることが見てとれる。
両錐形の中央付近にはシートをなす白濁箇所が脈状に連なっている。この連なりはいわゆるファーデン水晶単晶の白濁糸線を想起させる、と私は思う。柱状単結晶の連晶の平行度が高いときには、さながら平板形状を持った水晶に一本の縫糸線が直線的に走る様子に似てくるのではないか。