1020.ファーデン水晶5 Faden Quartz (パキスタン産)

 

 

 

faden quartz

ファデン水晶(亜平行連晶) 1例目 −パキスタン産
長柱状の単晶が僅かに軸線をずらしながら
連なった亜平行連晶形。
分かりにくいが白濁部が縦方向に伸びている。

faden quartz

上半分の拡大画像
各単晶形の柱軸は必ずしも
一致していない(傾いている)。
先端あたりには柱軸が他のものに対して
大きく傾いた単晶形も見られる。

faden quartz

一番上の画像の下方には、
かなり長めの柱状単晶形が繋がっており、
その内部に柱軸より僅かに傾いた
伸び方向を持つファーデンが見られる。

faden quartz

ファーデン部の拡大画像
ファーデンの伸び方向は
柱軸に対して約 4度傾いている

faden quartz

ファーデン部をさらに拡大した画像
バーコード模様はファーデンの伸び軸に
対して左側で約 85度、中ほどから右に
かけて 75-70度ほどとなっている。
中央付近に主晶に対して柱軸の傾いた
小さな単晶形が突出している。

 

faden quartz

ファデン水晶(亜平行連晶) 2例目 
−パキスタン、ワジリスタン産
ファーデンの伸び方向は左と中央の
単晶形に対して約 14度傾いている。

faden quartz

ファーデンのバーコード模様はあまり明瞭でないが、
ファーデンの伸び方向に対して 65度ほど傾いているように見える

faden quartz

拡大画像
軸線をずらしつつ、ほぼ柱軸に沿って平行連晶。
ただし柱軸方向の異なる別の単晶形も3次元的に接合している。

faden quartz

上の画像の裏面側にあたる画像。
ファーデン部が柱軸方向の異なる単晶形同士の
接合起点になっているように見える

faden quartz

ファーデンで連なっているのは、
必ずしも亜平行連晶形の単晶でなく、
また必ずしも2次元的な連晶に限らない。

 

faden quartz

ファデン水晶(亜平行連晶) 3例目 −パキスタン、ワジリスタン産
柱軸線が互いに傾いた3つの主単晶形が
ファーデンを起点に接合している。
ファーデン部は結晶構造に比較的大きな
乱れを含む領域と思しい。

faden quartz

上の画像の裏面。3次元的な連晶

 

 

ファーデン水晶はしばしば平板状の結晶形をなして、その中央にほぼ等幅の白濁線が伸びている。白濁線がよく整っている標本では、その線が幅の狭い白濁部と透明部とを交互に繰り返して、バーコードのような構造を見せて伸びるケースがある。No.951 に一例を示した。この例ではバーコードの伸び方向は白濁線に対して約75度ほど傾いており、また白濁線自体は水晶の柱軸に対して 約53度、あるいは約57度傾いている(白濁線を挟んで異なる)。

ファーデンの成り立ちを説明した文献で、白濁線の伸び方向に対してバーコードが(つねに)垂直になったモデル図を見かけるが、私の観察ではそうとは限らない。というか、普通そうなっていないし、また長い白濁線では傾きが変化している場合もある。
白濁線の伸び方向と水晶の柱軸方向とは、普通角度を持っている。両者が一致する事例を示した文献もあるが、私自身は未見。
白濁線が弧を描く例は珍しくない。この現象は成長中の結晶にせん断方向の応力が作用して線の向きが(バーの向きも)曲がったためと説明されている。つまり(緩やかな)応力下での成長は見かけの結晶構造を歪ませるという仮説と、ファーデンのバーの方向は歪んだ結晶構造の支配下にあるという仮説とが前提されている。
私としてもその仮説は蓋然性が高いと思うが、但しプレファランスな方位は一通りでないだろうと思う。言い換えると多数の標本を検定していけば、有意に出現率の高い複数の傾き角度・方向性のピークが存在するだろうと推測する。@白濁線と柱軸方向の関係についても、A白濁線の伸び方向に対するバーの傾きについても。

このページではファーデン水晶の標本を3例取り上げた。
1例目は比較的バーコード模様の整ったファーデンを伴う細柱状の単晶形の亜平行連晶。平板状の連晶とは少し趣きを異にする。
2例目は平板的な単晶と柱状的な単晶との亜平行連晶で、ファーデンのバー模様はあまり明瞭でない。上述の@、Aの傾きは、No.951の例を含めていずれも異なっており、一意的に決まらないことははっきりしている。
3例目はファーデンを起点として単晶形が3次元的に接合した形。これは No.1017で示した平板状単晶の長い連晶形がファーデンを起点に3次元的な発展性を持つことの傍例といえる。
ファーデン部は結晶が異常に素早く成長した結果として、異物(気泡等)を含んだ定幅で周期的な構造を伴うと一般に考えられているが、おそらくはまた成長過程で解消されない結晶構造の乱れこそが、素早い成長の持続的な駆動力になったと考えることも出来るのではないか。そしてその乱れは結晶の成長軸にいくつかのプレファランスな選択肢、双晶ないし多結晶的な進展性を(潜在的に)与えるのではないか。

鉱物たちの庭 ホームへ