1021.ファーデン水晶6 V字接合 Quartz faden V-conjunction (パキスタン産) |
ファーデン水晶の標本を2点示す(No.75の標本も再掲)。これらを観察して私が言いたいことは、
1)主形をなす平板晶中のファーデンの伸長方向は、たいてい平板晶の柱軸に対して傾いており、また広い平板面(柱面)に対しても平行でない(傾いている)。
2)ファーデン水晶には、二つの平板晶が「平板面上で柱軸に対して垂直な共軸」の周りで捩れた配置の接合をなすものがある。ここではV字接合と表現した。(普通の平板晶でも見られるグウィンデル状の歪みに類似。ファーデン水晶にもグウィンデル状の捩れ平面を持つものがある。※補記1)
3)ファーデン水晶は主平板晶形に対して柱軸の傾いた配置の小晶を伴うことがしばしばある。そうした小晶はふつうファーデンの近傍に生じている。(このページには柱軸が約 30度傾いたもの、ほぼ垂直に傾いたものを紹介した。)
4)ファーデンを起点として複数の平板晶や小晶が3次元的な接合をなすことは珍しくない。(No.1017は好例。)
5)ファーデン領域は 2)〜4)のような異方配置の晶形を共存させうる拠点として働く。おそらく一つの結晶構造秩序だけでなく、いくつかのプリファランスな秩序を成長の選択肢として潜在させた領域と思われる。
補記1:MR誌 Vol.31-3 の「ファーデン水晶の起源」記事は、グウィンデルは火成貫入岩体中に生じて煙水晶であることが多く、ファーデン水晶は変成作用を受けた熱水起源であり透明水晶であることが普通、と産状の違いを分けており、どちらも捩れているが原因は異なっているだろう、と判断している。またファーデンを持つグウィンデルはないだろうと言う。私としてはアーカンソー産にファーデン水晶とグウィンデル水晶とがあったのではないかと思うが、この場合のグウィンデルは煙水晶でない。