1041.水晶 平板状交差 Crossing tabular Quartz (ブラジル産)

 

 

水晶 −ブラジル、M.G.州、モーロ・ベーリョ金山産

二つの平板状主晶AとBとが、対向する柱面の
ほぼ全幅を使って交差する

二つの主晶の柱面同士がなす角度の関係図

中央上部に小晶が上向きに伸びているが、この小晶の一対の柱面と
下(奥)にある主晶Bの一対の柱面(平板面)とは平行。
小晶と主晶Bの柱軸同士の交差角は約 120度。

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水晶 −ブラジル、M.G.、Morro Velho Gold Mine産

 

 

ブラジルのモーロ・ベーリョ金山は古い歴史の鉱山で、1725年に採掘が始まり、鉱脈を追って地底深くへどんどん掘り進んでいった。1915年に深度 1,775mに達して、当時世界でもっとも深い鉱山と呼ばれた。28年に南アのビレッジ・ディープ鉱山にその座を譲ったが、ミナ・グランデ坑は最終的にレベル27で深度 2,453mに達し、周囲の岩石温度は 55度に至った(1934年)。
金・銀・砒素等を目当てに掘り、1834年に英国資本が入ってから 2004年にいったん閉山するまでの産金量は 370トンと見積られている(もっと大きな数値の評価もある)。
鉱物標本としては 1960年代が収穫期で、70年代にかけて菱鉄鉱、燐灰石、硫砒鉄鉱などが市場に出回った。もっとも鉱山会社は 70年から結晶標本の採集行為を禁止したので、その後は次第に品薄になった。水晶標本にも魅力的なものが出て、通のなかにはブラジル最強と唱える人もある。

この標本は 70年代に米国に渡り、その後私のところに来た。なかなかお目にかかれない形状と思っている。厚み約12-13mmの平板状結晶が二つ交差した形がメインで、これにいくつかの小さな結晶がさらに交差している。一般に平板状の水晶は錐面の会合部が尾根状に伸びてノミ形(タガネ形)になることが多いが、この標本の主晶は二つとも山形の頂点を持っている。
一方の柱面上に他方が立つ形で、倒れ角約 9度(開き角 81度)で交差する。配置関係の詳細は上の「角度の関係図」に示したが、対向する柱面同士で双方ともほぼ全幅にわたって接触する。言い換えるとほぼ等大の結晶の完全交差形であり、これをツイン(双晶)と呼ばなくてどうすんだ?と言いたい気がする。じゃあどんな双晶則が支配しているのか?と訊かれると、口ごもってしまうが。

もう一つ興味深いのは、3つめの画像にコメントしたように、主晶のひとつ(B)の平板面(柱面)と、ある小晶の一対の柱面とに平行関係があることだ。両者は傾軸角約60度(120度)で交差している。偶然? いいや、偶然にしては出来過ぎ君ではあるまいか。

 

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