1040.水晶の交差 Quartz crossing aggrigate (パキスタン産) |
いろんな形に集合した水晶を蜿蜒とご覧いただいている。日本式(ガルデット式)双晶やら、R-G式双晶、サルジニア式に似たV字形、複合形、シート状聚形、ファーデンのねじれ連晶、ファーデンのL字接合、平行成長形、エピタキシャルなラティス水晶、etc.…。
こういう標本を続けて見ていると、どんな集合形を見ても意味あり気に見える、というのは本当である。何らかの双晶則(水晶の話2−3)が作用している気がしたり、複数の結晶核が放射状に配置しただけの幾何学形状に過ぎない気がしたり(cf.
No.1012)、歪みが蓄積したねじれ連晶に見えたり、何か他の(目に見えない)鉱物とのエピタキシャルな方位関係を持っているのじゃないかと思ったり。
もちろんランダムに連なった形が、偶々、優雅で調和的な配置をとっていることもあろう。
私はいろいろ御託を並べて、時に学術っぽいことも書くが、つねに確信を持っているわけではないし、他人様の学説が正しいかどうかも決定出来ない。ただあれこれ考えたり、何かを発見した気になったり、手元の標本にそれまで気づかなかった意味があるように感じたりするのが楽しいのである。
開き直って言えば、つまるところ我等が鉱石趣味においては、学術めいた考察にしろ標本を愛でるためのよすがの一つであり、傾けたすべての知的情熱は、面白いね、楽しいね、石は不思議だね、という感覚に帰着するのが本願ではなかろうか。されば帰還の秋まで、迷いに迷うもまたおかし、である。
このページの標本は私はどう解釈していいか、ちっとも分からないものである。いずれも風変わりな水晶の宝庫パキスタン産。
上の標本は、ややねじれながら平行連晶した水晶群が複数、ランダムな配置で集合しただけに見える。ところが局部的にライヘンシュタイン・グリーゼルンタール式双晶のような配置と近似角度で交差している箇所があったり、別の箇所では一つの結晶の柱面から平行連晶が垂直に近い角度で生えていたりする(日本式双晶のように一対の柱面は平行)。なぜなんだ?
下の標本は、大き目の単晶に小ぶりの結晶が二本、ランダムな配置で貫入しただけに見える(羽のようにも見えるが)。しかしこの二つの羽は柱面同士が正対していて、約61度の角度を持っているのだ。いかにも意味ありげではないか。
ほんとうは別に偽装された深い意味(神秘)などないのかもしれない。学識豊かな方々には、そんなもんサイトに載せてどうすんだ? と仰られるかもしれない。
されば私は「葬送のフリーレン」の勇者ご一行様に気持ちを代弁してもらおうと思う。
ヒンメル「僕はね、終わった後にくだらなかったって笑い飛ばせるような 楽しい旅がしたいんだ。」
アイゼン「本当にくだらねえな、こんな物に夢中になれるのか。」
フリーレン「宝の山だよ。」
「SPSさんはほんとうに変な標本ばかり集めていますね。」
「趣味だからね。」
ほんと それね。