123.エメラルド Emerald  (中国産)

 

 

エメラルド−中国、雲南省、文山産

 

中国では、祖母緑と呼ばれるエメラルド。こんなに若々しい色なのに、なんで、おばあさんの緑なんだろう?

文山のエメラルドは 1990年代に入って産出するようになった。エメラルドとしては珍しく、クロムではなく、バナジウムによって着色されているという。さる消息筋の試験では、酸化バナジウム1.29%、酸化クロム 0.09%、酸化鉄 0.74%という分析数値があがっており、ほぼ純粋なバナジウム緑であることが察せられる。

見てのとおり、白い石灰岩質の母岩に懐胎されている。微小な黄鉄鉱の結晶を伴っている。暗色部分は何だか知らないが片岩的な石で、変成作用があったことを感じさせる。私が興味深いと思うのは、エメラルド結晶の少なくとも一本が日本刀のように湾曲していることだ(写真上方)。石灰岩と暗色母岩の入り込み具合から見ても、産地の地層は、そうとうモメているのではないかと思う。

余談だが、中国のトルコ石は、松緑石と呼ばれている。アリゾナ産と違って、緑色味の強い、中国人好みの石だ。そう、彼らは緑(実際には、日本と同じく青と緑を厳密に区別してはいない)が大好きである。そんでもって、多分、おばあさん方を尊敬しているのだろう。

cf. 古代中国の松緑石、 TU2

追記:文山産と標識されるエメラルドは、雲南省文山壮族苗族自治州(略して文山州)の麻栗坡県老山山脈で発見されたもので、中国では唯一のエメラルド産地という。麻栗坡県は古生代の地層が分布して、変質により豊かな金属鉱床が形成されている。錫やタングステンの鉱床が数十カ所あるといい、宝石鉱物としては他にガーネットやペリドットも出るそうだ。
エメラルドの結晶としてはかなり大きく色目も美しいが、残念なことに透明度が低く、原石は置き物や彫刻小物に加工されるものがほとんど。透明な宝石質の石はコロンビア産並み、あるいはそれ以上に高価といわれる。

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