793.水亜鉛銅鉱ほか Aurichalcite (メキシコ産)

 

 

Aurichalcite

水亜鉛銅鉱(針状)、ローザ石(中央付近 微小球状)、異極鉱(中央付近 無色透明)
-メキシコ、デュランゴ、マピミ、オハエラ鉱山産

 

水亜鉛銅鉱 (Zn,Cu)5(CO3)2(OH)6 の標本はオハエラ名物の一つで、明るいコマドリ卵の色(いわゆるティファニー・カラー)ないしトルコ石色の針状結晶が、リボン状やタフタ状、放射状になって産する。3cm長さに達するものがある。標本の最盛期は 50-60年代にかけてで、15cmから30cmサイズの博物館級標本が降って湧くように市場に出回ったという。しかしそんなスケールの標本はこの後ばったりと途絶えた。
亜鉛初生鉱石が風化作用を受けて生じた二次鉱物であるが、さらに風化が進むと水亜鉛土 Zn5(CO3)2(OH)6 に変化するという説がある。針状結晶の先っぽが淡色化したものがあるのはその現れ、というのだが、ただし両者の間に固溶体の関係はなく(連続しない)、オハエラ産の水亜鉛土は銅成分をほとんどまったく含まない。
微小結晶のインクルージョンが方解石を青緑色に染めた美麗標本も知られており、最近では2000年前後に市場に出回った。

亜鉛孔雀石 (Cu2+,Zn)(CO3)(OH)2 は水亜鉛銅鉱に似た組成を持つが、亜鉛より銅成分に富んだ二次鉱物である。核部が孔雀石 Cu2+2(CO3)(OH)2 で周縁部が本鉱となった組合わせの標本がある。本鉱はその名の通り、亜鉛成分に富んだ孔雀石という位置づけになる(ただし両者間は不連続)。オハエラでは水亜鉛銅鉱ほど出てこないが、No.17のような小気味のよい標本に出会うことがある(こちらは褐鉄鉱を覆うプラットナー石の上に晶出したもの)。
さらに亜鉛成分に富んだものが 亜鉛亜鉛孔雀石 Zincorosasite (Zn, Cu2+)(CO3)(OH)2にあたる。こちらはツメブ原産で、堀博士は重複和名を避けて亜鉛ローザ石と訳している。(そう訳して青緑色の鉱物に Rosasite はいただけない(ローザはバラ色の意だから)と仰るのだけど、それなら和名は亜鉛亜鉛孔雀石でいいかと思う。昆虫の名なんかにはよくある類の重複である)。

異極鉱 Zn4Si2O7(OH)2・H2O の標本もまたオハエラに多産する。風化作用の晩期に生じる鉱物で、地表付近あるいは坑内下部の水面付近(半世紀前にはレベル5、6)に多く見い出されてきた。異極鉱標本の最盛期は 70年代と目され、長さ8cmに達する結晶標本がツーソンショーを賑わせたという。とはいえ21世紀に入ってもかなり見応えのある標本が時々出ており、2006年にはカンパーニャ・エリアから 2.5cmサイズの結晶標本が数百個、まとまって市場に流れた。

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