223.水亜鉛土 Hydrozincite (USA産)

 

 

水亜鉛土−USA、ネバダ、グッド・スプリング産

 

中国に炉甘石と呼ばれる白色の砕けやすい石がある。この石と銅とを、1:1の割合で練って炉で熱すると、真鍮(黄銅)1.5が得られる。唐代にはすでに製造法が見出され、中国人はそれが亜鉛の合金であることを知らぬまま利用していたという。炉甘石とは、製錬所の炉ばたに積まれていたことと、舐めると甘いことに由来する。

この石の主成分は水亜鉛土という亜鉛の炭酸・水酸化物で、古くから眼病に効く薬としても知られていた。日本では、宝永2年(1704年)に売り出された井上目洗薬が有名だ。四川省川蜀産の炉甘石をか焼した粉末に、梅肉、樟脳、蜂蜜、氷砂糖を調合した優れモノ。昭和に至るまで製造された。

水亜鉛土は閃亜鉛鉱異極鉱菱亜鉛鉱から変成した二次鉱物である(cf.No.793)。薄い皮膜状になって産出することが多いが、ネバダ州のグッドスプリングでは、時折、塊の中に細板状(刃状)結晶を見ることが出来る(上の標本)。紫外線で鮮やかな青に蛍光する(「蛍光石」のコーナー参照⇒水亜鉛土)。
独名 Zinkweiss (亜鉛白)を意訳して亜鉛華(水亜鉛華)とも呼ばれる。

cf.No.896 補記4

補記:炉甘石(爈甘石)については、益富寿之助「石 昭和雲根誌1」(1967)に項がある。「ろかんせき」と読ませているが、江戸期には「ろがんせき」と読んだようだ。(本草綱目啓蒙(1803-06)、物品識名(1809)に載る)
「本草綱目」の集解に「金銀の苗で、塊のサイズはまちまち、形状は羊脳に似て多孔質、石脂のように舌に粘る。金鉱山に産する淡い黄色のものが上等。 …赤銅とこれを合わせると黄色に変じて、今の黄銅はみなこうして作っている」などとある。また本草用法を、「炭火で紅く焼いて、童尿に7回浸し、それから水洗いして粉に研って、晒して水分を飛ばす」と。益富博士は、西洋でこう礬水(硫酸亜鉛水溶液)を眼病の治療に用いることと軌一と、指摘している。
ちなみに「本草綱目」の赤銅の項は、「世間では炉甘石で練ってその色の金の如き黄銅を作り、砒石で練って白銅を作り、錫を雑えて練って響銅を作る。」と各種合金のレシピを述べる。

追記:ネバダ州クラーク郡グッドスプリングにあるイエロー・パイン(黄松)は、鉛−亜鉛を掘った鉱山で1950年頃に閉山して以来廃坑となっているが、1996年に採集家たちが坑道の900 レベルから水亜鉛土の美品を回収して市場に流したことがある。針状の結晶が母岩を覆い、その幅20cm に及ぶものがあった。共産鉱物に異極鉱、方解石、プラットナー石が報告される。画像の標本はその一滴。

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