296.ストロンチアン石 Srtontianite  (スコットランド産)

 

 

strontianite ストロンチアン石

ストロンチアン石(淡緑)と重晶石(白) 
−スコットランド、ハイランド(旧アーガイルシャー)、
ストロンチアン、ミドルショップ鉱山産

strontianite

ストロンチアン石・粒状結晶塊 
-USA、IL、ケイブ・イン・ロック産

strontianite

ストロンチアナイト/あられ石に似たトゲ状の結晶 
−USA、IL、ミネルバNo.1鉱山産

 

ストロンシウムといえば、稲垣足穂の「星を売る店」に並んだ赤いドロップ、炭酸ガスとともに立ち上るライムや薄荷の香り、あるいは「スターメイカー」が打ち上げる鮮やかな星、赤く発火して尾を曳くひと筋の光芒である。

でも、現実の世界でこの元素が発見されたのは、スコットランドはアーガイルシャー地方(当時)の鉱山町ストロンチアンで採れた、白く重たく地味な本鉱からなのだった。淡いリンゴ緑に色づいたそれは重晶石(硫酸バリウム)を伴い、当初炭酸バリウム(毒重石)だと思われ、やがて鮮やかな炎色によって、未知の元素を含む新鉱物と認められた。燃えてこそ命の標本?

 

参考: 1790年にロンドンの医師アデア・クロフォードがストロンチアン産の「空気化(固定)バライタ」が未知の土類(元素)を含むことに気づいた。同年ズルツァーはこの鉱物をストロンチアン石と呼んだ。1793年にエジンバラのT.C.ホープが新土類ストロンチアを含むことをはっきりさせた。
ハンフリー・デービーが、本鉱から元素ストロンチウムを分離したのは1808年だった。産地のグランピアン高地はデボン紀に花崗岩が貫入して形成された土地で、ストロンチアンはブルースター沸石 Brewsterite-Sr (ストロンチウムやバリウムを含む沸石)の原産地でもある。
ストロンチウムの優越する輝沸石 Heulandite-Sr も近年確認されている。
19世紀以来、重土十字沸石(バリウムを含む沸石) Harmotomeの良品を産し、T.トムソンはやや組成の異なるものを認めて Morvenite (南方の町 Morven に因む)の名で報告した。cf. No.902 ストロンチウムの優越する十字沸石は未だ世界のどこにも発見されていないようである。
cf. ヨアネウムの標本

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