304.輝水鉛鉱 Molybdenite (日本産) |
輝水鉛鉱の良品は案外世界に少なく、日本やオーストラリアはその卸元といえる(Cf. No.156)。上は有名産地のひとつ、小馬木(こまき)鉱山のもの。
「柔らかいね〜」と言いながら、指を押しつけるのはやめて…
追記:宮沢賢治(1896-1933)「風の又三郎」は、父親の仕事の都合で転校してきた児童が物語の中心に据えられるが、その子の父は「上の野原の入り口にモリブデンという鉱石ができるので、それをだんだん掘るようにする為」に来たのだという。
「どこらあたりだべな。」
「私もまだよくわかりませんが、いつもみなさんが馬をつれて行くみちから、少し川下へ寄った方なようです。」
「モリブデン何にするべな。」
「それは鉄とまぜたり、薬をつくったりするのだそうです。」
といった会話が先生と児童との間で交わされる。
賢治の作品は一般に岩手をモチーフにした架空の場所が舞台で、作中に出てくる笹長根という土地は実際に岩手県内にある。
しかし何度か映画化された作品の中には山梨県の山村を舞台にしたものがあったようだ。
加藤昭博士は子供の頃にそんな活動写真を見て、山梨県にモリブデンが出ると覚えられた。そしてそのモデルとなったのは、おそらく鶴瀬の輝水鉛鉱の産地だったろうと推測されている。日本で最初にモリブデンが採掘されたところで、古くから知られていたからだ、と。(2022.5.1)
cf. No.813 追記 (日本のタングステン/モリブデン工業の始まり)