322.透輝石 Diopside (アフガニスタン産)

 

 

ダイオプサイド −アフガニスタン、コクチャ峡谷、ピタワク産

方解石中のクロム透輝石 −ブラジル、M.G.産

透輝石と灰鉄ざくろ石と雲母
−アフガニスタン、パラチナール産

 

透輝石はマグネシウムとカルシウムの珪酸塩で、わりと産出の多い鉱物である、というか造岩鉱物のひとつである。カルシウムに富む(そしてしばしば鉄分を含む)変成岩や火成岩中に一般的にみられる。

接触変成帯では苦灰石と石英との反応によって生じ、その過程は透閃石の生成に似ているが(→No.284の化学式)、珪酸四面体の連鎖構造が透輝石では単鎖、透閃石では二重鎖という違いがあり、おそらく透輝石の生成条件の方がより高温側にあると考えられる。この種の構造を持つ鉱物はときに繊維状の外観を示す。

マグネシウムを鉄に置き換えたものがヘデンベルグ輝石(灰鉄輝石)で、また鉄よりマンガンの多いものはヨハンセン輝石と呼ばれる。それぞれの間に連続した固溶体が存在しうる。
ダイオプサイドとは、ギリシャ語で「ふたつ」「見る」「石」の意になるが、その由来は「単斜晶系の二回対称シンメトリに因む」、「外観の多様さに因む」、「多色性に因む」などと資料によって異同があるので、よくわからない。

色目の鮮やかなもの(例えばクロムを含んだ緑色種)、透明度の高いもの、猫目効果のあるものなどは、廉価な貴石として重宝される。
参考:バイカル石(ラクスマンと光太夫)、 ビオラン、 No.829 補記1(コッコライト)

補記:「地学の語源をさぐる」(1978)によると、アウイは晶癖がいろいろあることから、di (ふたつ)+opsis(見える・相)の語を用いたが(1806年)、後にはむしろ dia(〜を通して)+ opsis と理解されているそうだ。

補記2:日本では岐阜県の洞戸村洞戸鉱山の杢助坑に濃緑色半透明の扁平柱状の美晶が多産して、日本の代表的結晶鉱物の一つに数えられた。楽しい図鑑に標本が載っている。

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