332.グロッシュラー Grossular (カナダ産)

 

 

グロシュラー−カナダ、ケベック、アスベストス産

 

グロッシュラー Ca3Al2(SiO4)3 は、アンドラダイトよりも産状の多様なざくろ石だが、やはりスカルン中や蛇紋岩中に出るのが主である。
グロッシュラーのいわれは、ドイツ、アウエルバッハ産の石がグーズベリー(西洋すぐり、学名 Grossularia)に似たうすい緑色だったことに発し、一名グーズベリー・ストーンと呼ばれた。
無色の結晶中にも少量の鉄分(酸化鉄)が混入していることが多く、その量が増えるとうす緑色になったり、うす黄色(トパゾライト)や赤みがかった黄色になったりする。最後のものは肉桂(シナモン)の色に似ているのでシナモン・ストーンと呼ばれる。

ジェフリー鉱山はカナダ、モントリオールの東およそ160キロにある(あった)蛇紋石石綿の有名鉱山で、やや古い資料になるが、1970年代には年産60万トンを誇り、世界のクリソタイル石綿生産量の13%を占めた。埋蔵量は5億トンといわれ、ソ連のAsbestに次ぐ世界第二位の鉱床と考えられた。18世紀頃の記録によると、ケベック州南部の原住インディアンや初期入植者たちは、耕した畑で集めた石綿を使って、ソックスやミトンを編んでいたという。鉱山開発が始まったのは19世紀の末で、ジェフリーは当時の鉱山所有者だったそうだ。

ここに産するグロッシュラーは Hessonite 系の、無色〜シナモン〜オレンジ色の美結晶である。1950年頃(かそれ以前)から市場に広く出回った定番品だったが、先年閉山したと聞いた。今でも国を挙げて石綿輸出に積極的なカナダだから、そのうち復活するのかもしれないが。
Hessonite ヘッソナイト(エッソナイト)の語源はギリシャ語のエッソン(より少ない)で、色のよく似たジルコン(ヒアシンス)より硬度が低いことをあらわしている、と手元の宝石書にあるが、例によって別説に事欠かない。詳しいことは「空想の宝石結晶博物館」さん(相互リンク)をご覧戴きたく。
ジェフリー鉱山では緑色の亜種も有名品だったが、こちらは成分的にウバロバイトに近く、発色はクロムに起因するという(cf. No.890)。インクルージョンにクロム鉄鉱を含むことがある。

cf. No.889 ベスブ石(ジェフリー鉱山)

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