357.カルコメン石 Chalcomenite (イタリア産) |
CuSeO3・2H2O。銅のセレン酸2水和塩という珍しい二次鉱物。和名に含水セレン銅鉱と呼ばれた。学名
Chalcomenite は、ギリシャ語で銅を意味するChalco
と、月を意味するmene
とに由来する。何故月なのかは、元素セレンが命名されたときのエピソードを想起すべし(→No.218)。
同様の命名法で、コバルトのセレン酸2水和塩にコバルトメン石、鉛のセレン酸鉱物にモリブドメン石という例もある(何故鉛がモリブドスか→No.156参)。
この種の希産鉱物の美晶は時をはずすと得難いものだが、本鉱は
1998年にまとまった数の良品が出たらしい。鮮やかなセルリアンブルーの柱状結晶が群れるさまは、顕微鏡下にたいへんゴージャスである。
日本では銅のテルル酸2水和塩である手稲石の類縁鉱物として有名。
cf. Baccu Locci の本鉱は Lapis 1997 Sept 号に特集がある。
追記:サルジニア南東部のバクー・ロッチ鉱山は 1852年から1978年にかけて稼働され、鉛、亜鉛、また銀鉱石などを掘った複金属鉱床である。美しいカルコメン石が採集されて話題となったのは閉山後の 1986年という。最良の標本は古い坑道の入り口付近の露頭から 1996年に採集された。ブロシャン銅鉱、炭酸青針銅鉱、サーピエリ石、デビル石などの銅の二次鉱物と共産。(2021.8.14)