358.蛇紋石 Serpentine  (ロシア産)

 

 

Serpentine

玉質の蛇紋岩 -ロシア、ヤクーティア産

 

蛇紋石質の玉。比較的柔らかいが、熱には強い。この範疇の玉は中国産のしゅう岩玉が有名で、応接セットの灰皿や時計の台座に加工したものをよく見かける。上の標本はこれと石質が似ているから、あるいは両者相混ざって出回っているかもしれない。全体的にはアンチゴライトが主成分となった蛇紋石の混合物で(cf.No.331 蛇紋石の種類)、白〜淡緑色の部分は塩酸で発泡することから炭酸カルシウム成分(あられ石または方解石)が混じっているらしい。
前にも書いたが、ロシアは貴石細工に熱心なお国柄で、綺麗な石を見つけると、すぐに磨いて商品化を図っている印象がある。

ちなみに夜光杯で知られる酒泉玉も蛇紋石質なのだが、たいてい色目がもっと濃く、石紋も明瞭である。

補記:あるいは蛇紋岩からの変成で滑石を含んでいるかもしれない。触ると軟らかい感触だし、若干の脂感もあるから。
蛇紋岩に炭酸を含む流体(あられ石などのもととなった成分)が作用すると、Mg6Si4O10(OH)8 + 3CO2 ⇔ Mg3Si4O10(OH)2 + 3MgCO3 + 3H2O のような反応で、滑石と菱苦土石(またはブロイネル石)と水とが生じる。ただし滑石は塩酸に反応せず、菱苦土石は冷塩酸では発泡しない。
ちなみに蛇紋岩からの滑石生成には、珪酸分に富む岩石(石英片岩など)との反応もあり、Mg6Si4O10(OH)8 + 4SiO2 ⇔ 2Mg3Si4O10(OH)2 + 2H2O のように、蛇紋石と石英とから滑石と水とが生じると考えられる。

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