369.ケティヒ石 Koettigite (メキシコ産) |
ケティヒ石はコバルト華やニッケル華と同じ結晶構造を持つ亜鉛の砒酸塩鉱物である。その伝でいくと、亜鉛華と呼んでもよさそうだが、両者と比べて産出がまれ、色彩もぱっとしないせいか、未だ愛称はないようだ。
原産地ドイツ・シュネーベルクの化学者オットー・ケティッヒにちなみ、1850年に命名された。閃亜鉛鉱はじめ亜鉛鉱石の風化によって生じる。
図鑑によると、その色は白、茶色、カーミンレッド(コバルトを含む場合)などとされているが、デュランゴ産の標本は、ケティヒ石と亜砒藍鉄鉱(Parasymplesite)との中間的な組成を持っており、鋼灰色を示す場合が多い。同じ結晶形でベージュ色の鉱物も共存しているが、端成分に近い(鉄分の少ない)ケティヒ石であろうかと思う。
一方の亜砒藍鉄鉱は、光沢のない粉っぽい藍色の結晶になる。
ちなみに、ここに名前を挙げた鉱物は、いずれもビビアナイト(藍鉄鉱)グループに属する8水和塩である。
備考:一般に「亜鉛華」という言葉は、白色顔料や医薬品に用いられる酸化亜鉛を指す。
追記:本鉱のベスト標本産地はオハエラ鉱山で、今のところ他の追随を許さない。画像のようなラス板状のものや放射針状のものがある。現地の坑夫らは「青色レグランド石」と呼んだ。結晶形が似ていることと、レグランド石の巨晶を産した同じ晶洞に本鉱も産したからである。70-80年代が収穫期。(2021.8.15)