453.大江石 Oyelite (RSA産)

 

 

Oyelite 大江石

大江石(淡桃色)と方解石の透明結晶(右辺) -
RSA、カラハリ・マンガン・フィールド、インチュアニンU鉱山産
(撮影 ニコちゃん)

 

岡山県備中布賀を原産とする鉱物である。備中石(1973)、布賀石(1977)に次いで発見された種で、3番目にして地名ではなく、岡山大学ゆかりの学者さんに献名された。その後も、逸見、草地、森本、武田と新鉱物に寄せた顕彰が続いた。9番目でパラシベリア石、10番目に岡山石と地名に戻ったが、次はまた人物名、沼野(2005)である。新鉱物の卸元を研究フィールドに持った学者さんは、後世に名を残すチャンスに恵まれている。(その後、島崎(2010)、千代子(2019)がある。)
話は逸れるが、属と種とからなる二名法を編み出し、植物界の体系的な分類に機軸を開いたリンネ(1707-1778)は、その始めから献名効果を意識していた。反魂草という植物を師だったリュードベックに捧げ、「この地が滅びない限り、そしてこの世に花が咲く限り、反魂草(ルドベキア)が春ごとに先生の御名の栄えとなることでしょう」と手紙を書いた。かと思うと、彼の分類方式を罵倒した学者の名前を、むちゃくちゃに醜くて、臭いニオイを放つ雑草にあてつけたりもした。
ずい分人間くさいお話だが、鉱物の分野でも、大喜びされた方がある一方で、「どうせなら、もっと綺麗な鉱物を選んでくれたらよかったのに…」と嘆いた方もおられたとか。

大江石は、トベルモリ石グループのひとつである。布賀のほかに南アフリカを含むいくつかの産地が知られているが、希産といって間違いない。

補記:リンネは自然界の博物を、動物界、植物界、鉱物界の3界に分けた。請われて鉱物学の講義や公開講演をしたこともある。彼自身は鉱物の分類には踏み込まなかったが、国際鉱物学会はリンネの功績を多として、スウェーデンのバストネス鉱山で発見された硫化コバルト鉱(CoCo2S4)にリンネ鉱の名を贈った(1845)。

Cf. No.173 トルマリン とリンネ

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