469.鉄菫青石 Sekaninaite (チェコ産) |
鉄菫青石(セカニナ石)は、菫青石(コルディエ石)のマグネシウム成分の過半が鉄に置換された鉱物に相当する。日本でも産出することから、天藍石に対する鉄天藍石(スコルツァ石)と同様、国産コレクターの間に知名度があるが、どちらかといえばマイナーな種だと思う。
チェコのモラビア地方ドルニ・ボリに大きな産地があり、かつて菫青石と考えられていたものがX線分析されて、1968年に独立種となった。同国の鉱物学者ヨゼフ・セカニナに因む。
新鮮なものは灰緑〜青紫色の大きな(60cmに達する!)、やや不完全な結晶をなし、準宝石として用いられることもあるという。その意味で20世紀に発見された宝石のひとつである。
しばらく他の産地が知られなかったが、最近になって日本、アメリカ、ドイツ等から複数の発見が報告されている。
外観、多色性、風化に弱く雲母類に変質しやすいところ等、菫青石に似た性質を持つ。混同されてきたのもむべなるかな。
上の画像は、結晶面がわりとはっきりした標本だが、風化によって変色している。鉄錆が出やすく、周囲にも出ている。堆積性片麻岩に接触するペグマタイトに産するという。
斜晶系の柱状結晶だが、(110)の面角が60度に近く、この面を双晶面として擬六方晶形をなす。