578.パラアタカマ石 Paratacamite  (オーストラリア産)

 

 

Paratacamite パラアタカマ石

Paratacamite パラアタカマ石

パラアタカマ石−オーストラリア、WA、レッド・クロス産

 

理想組成 Cu2(OH)3Cl を成分とする鉱物は、いくつかの結晶構造を採りうることが知られている。 Dana's 8th(1997) を翻くと、アタカマ石(斜方晶系)、ボタラック石(単斜晶系)、パラアタカマ石(菱面体晶/三方晶系)の3種が載っている。 パラアタカマ石の名はアタカマ石のポリモルフ(同質異像)であることから命名されたもので、チリのシエラ・ゴルダ産の原産地標本に拠って1873年に記載された。 この時代にすでにポリモルフという概念が理解されていたかどうか私は確信がないのだが、ダイヤモンドと石墨、方解石とあられ石(真珠)、黄鉄鉱と白鉄鉱など、化学成分が同じで結晶形の異なるメジャーな鉱物はいくつもあるので、結晶構造の証明はともかく、同質多形の存在自体はよく知られていたに違いない。(Wikipediaを見ると、1832年にヴェーラーとリービッヒが沸騰させて溶かしたベンズアミドを冷却しながら結晶化させたとき、冷却が進むと結晶形が変化することを観察したのが有機物質での最初の報告だとある。両者はその前にチオシアン酸銀でも観察している。 cf. No.836 異性体)

 さて、私はずっとこの3種(だけ)がポリモルフとしてグループを形成していると思っていたが、Dana's の後に出版されたMinerals and their localities (2004) を開くと、さらに Clinoatacamite クリノアタカマ石(IMA1993-060)という種が載っている。ボラタック石と同じ単斜晶系だが、異常磁性を持つ種であるという。 さらに調べてみると、パラアタカマ石タイプの結晶構造は、銅成分の一部が亜鉛またはニッケルで置換されて初めて安定することが分かっているらしい。純粋成分のパラアタカマ石は生成されえないということだろうか。
置換された鉱物の端成分系は、亜鉛側 Cu3Zn(OH)6Cl2 がHerbertsmithite (かなり特殊な物性−存在状態を持っているらしい)と、ニッケル側 Cu3Ni(OH)6Cl2が Gillardite と、それぞれ命名されている。さらにHerbertsmithite のポリモルフに三方晶系のkapellasite がある。
あまりにややこしくて、かつ風変わりな特性のものが含まれているようで、よく理解できない。いずれにしても肉眼で区別出来るわけではなさそうだ…。

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