49.水晶  Quartz   (USA産)

 

 

アーカンソー産の私たちは、結晶の大きさと透明度のよさで有名です。

水晶 −USA、アーカンソー州産

 

アーカンソー州には、ブルドーザーで掘り崩してゆく大掛かりなものから、家族で経営している手掘りの鉱山まで、無数の水晶鉱山があるという。世界最高と折り紙をつけられた水晶が、そんなにも沢山、地面の下に眠っているなんて、なんと豪勢な国だろうか。あふれるクリスタルパワーは、あまねくアメリカの国土を祝福しているに違いない。(1999.3)

cf. No.134 アーカンソー産水晶  No.969 (食像)   No.986 (ブラジル式双晶)


追記:アーカンソー州中西部には「クオーツ・ベルト」といって、「ロック・クリスタル」を掘る鉱山が東西200キロにわたって帯状に伸びている。日本式双晶を産するコリアークリーク鉱山や針状水晶を出すジェフリー採石場のような特徴的なヤマもあるが、多くの鉱山はどこでも性状の似通った無色透明・柱状の水晶を出す。逆にいえばそれだけ広大なエリアに、変化に乏しい一様な地質作用が起こったということだ。
とはいえ、山入り、各種インクルージョン入り、ファーデン、アメシスト(色つき)などのバリエーションはある。「アーカンソーのファーデンよ、すごいでしょ!」と笑顔で応接していた古参の米人標本商さんを思い出す。淡い茶色の煙水晶も出るが、アーカンソーの煙水晶(黒水晶)はたいてい無色透明の水晶を放射線照射で黒色化させてあるのが通り相場で、まずは処理を疑う必要があるらしい。

主に砂岩からなる古生代堆積岩の、ある統の脈中に水晶は産する。脈の褶曲は緩やかである。先住民がこれを矢筈や装身具に工夫したことは、スペイン人征服者の記録に残っている。白人が本腰を入れて水晶を掘るようになったのは、ホット・スプリングスに「温泉療法」にやってきた観光客向けの土産に売ったのが始めで、 1859年のことという。 Hot Springs と標識された水晶は、実際は長大なクオーツ・ベルトのどこかに出たものだ。
二次大戦中は水晶発振器を作るために掘った。戦後は鉱物愛好家向けの標本や室内装飾用の材が主となったが、80年代に入るとニューエイジ向けのヒーリングストーン需要が拡大した。なにしろ大量に採れるのでポンド幾らの卸し値でバルク売りされるが、鉱物愛好家の手におさまる上質の標本はもちろん目利きの選抜を経てそれなりのお値段になって届く。
鉱山の中には名目料金で採集体験をさせてくれるところがある。この地方を家族旅行するなら、水晶を掘って一日遊ぶのも楽しそうである。(2016.12)

いわゆる「パワーストーン」文化の米国における黎明は 70年代のヒッピー文化にあり、80年代に開花した。80-90年代の興隆期、アーカンソー州では水晶を掘って市場に流す人々が 500人からあったという。もちろんその一部は日本にも流れてきたのである。

 

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