677.ユージアル石3   (グリーンランド産ほか)

 

 

カコルトカイト(カコートカイト・カコトック石) 曹長石中のユージアル石粒
-グリーンランド、ナルサック産

ユージアル石の結晶 −ロシア、ヒビーヌイ、プテリコル山産

 

No.676の続き。ユージアル石を最初に発見したのは誰か、については異論もある。 Dana 8th を見ると、「ユージアル石は 1801年にシュトロマイヤーによって記載され命名された」とあって、ギーゼッケのグリーンランド行(1806-1813)よりも数年早い。だが彼が分析を発表したのは実際には 1818年(1817年?)であったから、この記述はいささか話を端折りすぎている。
1801年というのはトロムスドルフという人物が、グリーンランド産の「明瞭なへき開を示す赤い『層状』のガーネット」を分析して思いがけずジルコニウムを検出した年であり、このジルコン入りのガーネット、それも例外的にへき開するガーネットへの気づきを以て、ユージアル石発見とみる向きもあるわけである。

「層状」というのはイリマウスサーク南部の火成岩地域に産するユージアル石の特徴のひとつである。この地域にはアグアパイトと呼ばれるアルカリ岩質(かすみ石閃長岩)の複合貫入岩体があって、1700mに及ぶ層厚を持っている。床部をなす下位層(貫入の遅い岩体が下側にくるので、つまりは年代的に新しい層)はカコルトカイト(kakortokite/Qaqortoqite)と称して、アルカリ長石、かすみ石、アルベゾン閃石、エジリン、方ソーダ石などが葉理状〜層状の構造をなしているのだが、その中に粗粒〜自形結晶質のユージアル石がやはり層状に散らばって含まれているのだ。トロムスドルフが分析したのはおそらくこの種の標本だったと思われる。

上の標本はそのカコルトカイトで、白色の基岩中にチェリー色の(あるいは言い習わされた表現だが血の色をした)ユージアル石が点在しており、赤白のコントラストがとても美しい。粒々が画像縦方向に粗密の層を作っているのが分かるだろうか。
この石は、私の知るところではまだ10年も経たないと思うが、ラピダリー/パワーストーン業界向けに売り込まれてツーソンショーで好評を博し、以来グリーンランド産パワストの定番的アイテムとなっている。商品名はそのままカコルトカイト(カコトック石)。(ちなみに私は鉱物標本商さんから買ったので、ラベルは「ユージアル石」であるよ)
白色部分はこの標本では不透明な曹長石だが、半透明のかすみ石を基岩とする磨き石も出回っている。黒色の柱状鉱物を伴うものがあり、だいたいアルベゾン閃石と説明されているが、この標本の暗色部分はエジリンかエニグマ石と思う。
ついでにいうと貫入岩体の上部にはナウヤアイト(ノージャ岩:naujaite)と呼ばれる層があり、方ソーダ石、アルカリ長石、かすみ石、ファヤライトなどが粗粒組織をなしている。そしてその粒間を充填するようにユージアル石が網目状に繋がっている。同じ産地ではあるが、産状は明らかに異なる。

ユージアル石の組成について。
シュトロマイヤーは分析の結果、ナトリウム、カルシウム、鉄、ジルコニウム、そして珪素(珪酸)の5つの元素を認めた。しかし、今日ユージアル石中には希元素を含め、20種以上の元素が検出されている。
Dana 8th はユージアル石の二つの理想組成式を示し、「 Ca6Zr3(□,Fe)3Si24(Si,□3)(Ti,□)(Nb,Al,□)-(Fe,Mn,□)3(Na,K,Sr,REE,Mg)3(□,Sr,Mg)3(Na,□)36O69/(O,□)6(OH,□)6(Cl,□)2(Si9O27)2(OH)2Cl2 [SPC 33:207(1988)]、簡便には Na15Ca7Fe3Zr3Si(Si3O9)2(Si9O27)2(OH)2Cl2 [PD 5:89 (1990)] 」としている(記号□は空格子(ボイド)を示す)。それはなんの冗談ですか?と頭を抱えてしまう。
mindat を参照すると Na15Ca6(Fe2+,Mn2+)3Zr3[Si25O73](O,OH,H2O)3(OH,Cl)2 とあり、wiki には Na15Ca6(Fe,Mn)3Zr3SiO(O,OH,H2O)3(Si3O9)2(Si9O27)2(OH,Cl)2 と載っている。ほかにセリウムやイットリウムの存在を明示した組成式もある。なかなか一筋縄ではいかないのである。
とはいえ、アバウトに言えば本鉱の主要成分はシュトロマイヤーが示した5元素+酸素・水素・塩素である。
ジルコニウムを含むことから、その抽出が試みられたことがある。将来的にジルコンに代わる資源になるといわれている。
またレアアース元素(Ree)を含むことからその種の資源としても検討されている。ユージアル石はその名の通り、酸に溶けやすいので、2%の希硫酸に溶かして試料の濃縮を繰り返すと、高濃度の酸化ジルコニウムや酸化イットリウムが得られるそうである。またウランやニオブの鉱石としても有望という。
ユージアル石はあるところには大量にあり、カコルトカイト層では純粋なユージアル石が厚さ1mの層をなすこともある。たしかに資源になりそうである。

下の画像はコラ半島産のキビナ(ヒビーヌイ)岩体に産するユージアル石の自形結晶。暗緑褐色部はエジリン。この岩体もやはりアグアパイト質のかすみ石閃長岩であるが、イリマウスサークとは構成鉱物にやや違いがあり、ロパライト(loparite)やジルコン、燐灰石を伴うことが多い。⇒cf.No.35

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