365.霞石と方ソーダ石 Nepheline & Sodalite (ロシア産) |
かすみ石とソーダライトが共産している例。こういう標本を見ておくと、(ソーダライトは)「一般にアルカリ火成岩の特に霞石に密接に関連していて、霞石から変成したと思われるものも多い」と鉱物書にあるのが、すんなり胃の腑に落ちてくる。
かすみ石は造岩鉱物として世界的に広く分布し、ガラス原料用に採掘されている。ソーダライトはあるところには大量にあるが、ずっと産地が少ない。日本ではかすみ石さえ珍しく、ソーダライトは知られていない。
かすみ石は酸に反応するが、炭酸塩のような泡を出さない。粉末は静かに溶け、塊は霜が降りたように表面が曇る。もっとも、この石はなにもしなくても霞がかって見えるので、ギリシャ語で「曇った石」を意味する
Nepheline と名づけられたのだが。
磨くと表面に油脂光沢を生じ、玉として扱われることがある。ギリシャ語の「油」を語源に、Eleolite
(イーレオライト)と呼ばれる。和名は脂光石(玉)。(⇒玉の種類について参照)
青いソーダライトは貴石細工や装飾品に利用されており、色目や透明感でそれと判るが、無色の場合は他の准長石との区別が難しい。グリーンランドやカナダ産の標本は、蛍光性を示すことが多い。
かすみ石はケイ酸分に遭うと反応して正長石が出来る。どんな場合にも石英と共存しない鉱物とみられている。
補記:准長石はアルカリ長石に似た成分を持ち、長石よりも珪酸分に乏しい環境で生成する。ソーダライト(族)は塩素を成分に含む唯一の准長石(族)である。
補記2:浜田市長浜に産する霞石玄武岩で、蝋光沢をもつ石も地元で「油石」(あぶらいし)と呼ばれた。
補記3:Nepheline の命名は 1800年アウイによる。ベスビアス火山に産したガラス様のものを強酸に漬けると曇ったことに想を得た、と一般に説明されている。歌代博士は「硝酸の中に浸しておくと溶けて雲のようになるところから」と。益富博士は、雲のような沈殿物が出来るのでギリシャ語の雲
nepheleに因んだが、日本では「雲石」とするところを「かすみ石」とした(1884年)、理由は不明だが小藤教授の文才か、と述べている(原色岩石図鑑)。 私としては、日・中では古来、白雲石(岩)という名称があったこと(cf.No.723
苦灰石)、「雲根志」のように石(雲母)から発した気が空に昇って雲になるという観念もあったことから、雲石と訳すことを控えたのではないかと思う。童謡の「さくら さくら」は
♪かすみか雲か、と謳われて、まあどっちゃでも同じ感じがする。
ちなみに陽起石(白色の透閃石)は雲母の根とされる。