704.モルデン沸石 Mordenite (インド産)

 

 

モルデン沸石と青色玉髄 -インド、Jalgaon、カナルデ産

 

松岡正剛氏の千夜千冊 0119夜に、中学生の時に買ったポケット版の図鑑に夢中になったエピソードが語られている(cf.No.703)。その本がものすごい光を放ったことから、氏の鉱物派への忠誠は育まれた。そして自らの幸せな体験に照らして、大型の図鑑でなく、「なんといってもポケットガイド」から、「少年の冒険は始まらなければならぬ」と一般論を述べているのである。

あるポケットガイドが誰に対しても光を放つ、というものではない。それ自体で光を放つ特殊な本があるわけではない。そうでなく、その少年と出逢った時に、ものすごい光を放つことになるある本が世界のどこかにありうるのである。それがア・ボーイ・ミーツ・ア・ガールの秘蹟に匹敵する、ア・ボーイ・ミーツ・ア・ブックの神秘である。そのとき平凡な少年とその本とは、互いに光を放ちあう非凡な存在に変貌し、浄福の日々が幕を開ける。
だから松岡氏が、自分に向けて光を放った本の名前を伏せているのは賢明なことである。少年は自分の本に、自分自身の運命に従って出逢うべきなのだから。
とはいえ、幸福な光に導かれてその道に分け入った人によって書かれた本こそ、少年の心に共振を喚び起こすべきものではないか。そんな候補の一冊として、氏は益富博士の「鉱物」を挙げた、と私は読みたい。(氏がコラムの読者として想定したのは、おそらく実年齢ではとうに少年期を過ぎた少年であろうが)
なぜこんなクダクダしい解釈を書くか。それは何事も、自分の体験の中で理解しないかぎり、理解したことにはならないから。

画像は、白色毛状のモルデン沸石と糸こんにゃく状の青い玉髄の組み合わせ標本。玉髄の造形に惹かれて入手した。ア・ボーイ・ミーツ・ア・ストーン。
モルデン沸石は 1864年、ハウ氏よって記載され、産地に因んで名づけられた。原産地はノヴァ・スコシアのモーデンで、ファンディ湾一帯にはどこでも見られるという。理想組成式は (Na2, Ca, K2)4Al8Si40O96・28H2O。交換性陽イオンはナトリウムが優越するのが普通だが、カルシウムやカリウムが優越するものも知られている。(種として細分化はされていない)

毛状の沸石の代表格で、ついつい触りたくなること、オーケン石と同様に請け合い。ソーダ沸石、エリオン沸石(羊毛を意味するギリシャ語erion に因む。古い和名に毛沸石)、フェリエ沸石も似た形態をとることがある。かつてモルデン沸石に似て非なる毛状の沸石としてプチロル沸石が定義されたが(羽毛を意味するギリシャ語の ptilos に因む)、後にモルデン沸石と同じと分かって抹消された。現在は斜プチロル沸石(斜消光性でプチロル沸石に類似)に名残りを留める。こちらは輝沸石に近い鉱物である。(cf.No.456)

 

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