805.キンバーライト Kimberlite (カナダ産)

 

 

kimberlite

キンバーライト (パイロープ(赤色)、ペリドットなど混入) -カナダ、ヌナブト準州、バフィン島北部産

 

2013年初に入手した標本。どういうつもりだったか思い出せないのだが、たぶん、産地がバフィン島だったことと、この辺境の島にキンバーライトが?という意外さに惹かれて買ったのだったろうと思う。
キンバーライトは超塩基性岩の一種で、かんらん岩や蛇紋岩を主体として、金雲母、パイロープ、輝石、チタン鉄鉱、磁鉄鉱などを伴う岩石である。よく知られているようにダイヤモンドの初生鉱床の母岩となるもので、ダイヤモンドを探す者はまずキンバーライトを探すという(周辺の堆積土壌中に風化流出した、パイロープやチタン鉄鉱、含クロム透輝石などの指標鉱物を辿っていく)。ならば、バフィン島にもダイヤモンドが出るのだろうか? インターネットで調べた気がするが、その時は何も情報を得られなかったように思う。

カナダは一般には長い間ダイヤモンドに縁のない土地と考えられてきた。しかし地質学者やデビアスの専門家などは、1980年代、しきりとキンバーライトのパイプを探していたのである(今も探している)。そして1991年、BHP社の資金援助を受けた2人の地質学者がノースウェスト準州のラック・デ・グラス湖に巨大なダイヤモンド鉱床を発見したのだった。イエローナイフより300キロ北方の「不毛の地」での開発に BHP社は途方もない先行投資を要したが、1998年にエカティ鉱山が開かれ、続いて 2003年にダイアヴィク鉱山が開かれたことで報われた。2008年にはスナップレーク鉱山が稼働を始めた(その前にジェリコ鉱山が短期間稼働されていた)。それぞれのパイプの寿命は15-20年と見込まれるが、これらはこの地域に存在するおよそ75ケのパイプの一握りなのである。2014年はオンタリオ州北方のビクター鉱山と合わせて 1200万カラット、20億ドル以上のダイヤモンドが採掘された。2016年にはガーチョ・クエが新たに稼働を始めたが、この鉱山は寿命を2028年までと見積もって、5400万カラットの回収が見込まれている。カナダは今やダイヤモンドの世界的な産地なのである。

そしてバフィン島だが、ネットを見るとちゃんと情報があって、チドリアックに探査計画が進行中なのであった。2020年の稼働開始を目指して目下インフラ整備中ということである。

cf. 鉱物記 ダイヤモンドの話2、 ダイヤモンドの話3(かけらの3)

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