1053.紫水晶(サヤ形) Amethyst sleeve form  (ナミビア産)

 

 

紫水晶(アメシスト) 長柱状で中間が太ったもの
−ナミビア、ブランドバーグ産

内部に紫色に着色した傾斜面(無色部との境界)が見える。
累帯構造を伴う成長と思しい。

中間の太った部分。下部の内部に
紫色に着色した傾斜面が見られる。
右側の柱面は中間部で、
さらに上下錐面を伴った出っ張りになっている。
赤色透明の鱗片状のインクルージョンがある。
一般にヘマタイトまたはレピドクロサイトとされる。

 

「冠水晶」という呼称は、簡単にいうと、上部と下部とで柱面の太さが異なる形態を指す。上部が太いのがキノコ(松茸)水晶/セプター水晶で、下部が太いのが烏帽子水晶、あるいは逆松茸/リバースセプター水晶である。cf. No.1052
観方によっては骸晶形/スケルタルの一種とみなすことも出来る。cf. No.962  No.1042  エレスチャルに区分する向きもあろう。cf. No.961
要は自然界の鉱石は、その結晶/形態のどんな特徴に焦点をあてるかで、いく通りにも分類/定義が可能な場合があるのだ。ウィトゲンシュタイン流の集合論で言えば、それぞれの分類定義を2次元平面上に楕円形で象徴したとき、複数の楕円が重なった共有領域が存在し、ある種の標本はその内部に属するとみなせるのだ。

この標本は、上部と下部の柱面の太さがほぼ同じで、中間部が太い形態である。「冠水晶」にはあたらないが、太さの違いのある水晶という意味では類型といえる。とりあえずサヤ(スリーブ)水晶と呼んでおこう。
全体的に淡い紫色に着色したアメシストで、サヤ部の上下に濃淡境界が見られる。画像では判りにくいが、境界面はほぼ柱面を渉る一方向傾斜になっている(ししおどしの竹の先端のような)。サヤ部の上の境界面と下の境界面とは平行的だ。ということは柱の細い部分はほぼそのような形の一方に偏って発達した錐面を持ち続けて成長し、最後になって頭の山形錐面が形成されたのだろう(あいにく標本では割れているが)。
そしてその後、どういう理由でか、中間部だけで柱面を太らせるような成長が起こった、ように見える。一番下の画像に示すように、サヤ部のさらにその中間が出っ張って太くなった面がある。面白い形と思うので1ページ使って紹介した。

標本はナミビアのブランドバーグ産と標識されたもので、ここは近年、メキシコのベラクルスやウルグアイ/ブラジルに並ぶ良質のアメシスト産地と目されている。しばしばこの標本のように微小な赤色透明の鱗片を含む。実際の産地は近隣のゴボボセブ山地かもしれない。

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