130.錫 石 Cassiterite (ボリビア産) |
錫(スズ)のほぼ唯一の鉱石が、この錫石。コーンワルやボリビアでは、グライゼン作用によって変成された花崗岩中に生じている。輝水鉛鉱(モリブデン)、金紅石(チタン)、鉄マンガン重石(タングステン)など、一連の金属鉱物と共に断続的な脈を作っていることが多い。歴史に名高いボヘミアやザクセンのスズ鉱山も同様の産状だった。
この石は金紅石と同じ結晶構造を持ち、しばしばゴテゴテに双晶する。例えば上の標本は、反復9連双晶しているらしい(そうラベルに書いてある)。しかし、そんなに反復していたのでは、実際何がなんだかわからない。どこかの漫才師みたく、何がじゃ〜、どこがじゃ〜、と一人突っ込みを入れる私だ。
スズを含む岩石が風化して崩れ、雨水に流されて川底や海底に堆積していることもある。流錫(ながれすず Stream tin)と呼ばれる。マレー半島では、主にこのテの砂スズが採集された。私家版鉱物記に読み物があるので、時間があったら読んで下され。(「スズの話」)
また右の写真のように、腎臓状の錫石もあって、木錫(もくしゃく)と呼ばれている。沈殿した層が木目のように見えるからだ。ヨーロッパ人は好んでトード・アイと呼ぶ。彼らにはカエルの目玉(ガマの眼)に見えるらしい。これまた、どこがじゃ〜、と言いたくなる。
結晶図。e面を双晶面として、六連反復双晶(左上)、九連反復双晶(左下)
(「原色鉱物岩石検索図鑑」(旧版)より)
note:Wood Tin -K.S.(Royal Saxony) Bergakademie Freiberg /Pre WWI found
cf.イギリス自然史博物館の標本(マレーシア、キンタ産) ヘオミネロ博物館4(スペイン産) No.525 付記1
補記:錫は英語に tin (ティン/チン)という。叩くとチーンと良い音がするからだろうという説がある。とすると日本では鈴を振る音のように聞こえたというわけか。ついでに金はキンと、銀はギンと鳴るそうな。