135.バラ輝石/パイロクスマンガン石  Rhodonite/Pyroxmangite   (ブラジル産)

 

 

私の名前を教えてほしい? あらあら、そんなことが問題ですの?

パイロクスマンガン石−ブラジル、コンセリェイロ・ラファイエット産

バラ輝石(結晶) −ペルー、アンカッシュ、メルセデス産

 

上の標本は95年頃に採集されたもの。当初、バラ輝石として市場に出回っていたが、程なくパイロクスマンガン石に訂正された経緯がある(手元のラベルもそうなっている)。後者の方がより珍しい鉱物だから、ある意味では嬉しい誤認であった。しかし、肉眼では両者の区別がつかないので、鑑賞品として楽しむ人には、値段が上がっただけ嬉しくなかったともいえる。

面白いのは、バラ輝石か、パイロクスマンガン石かという議論が、その後も蒸し返され続け、未だ決着がついていないことだ。99年度のMR誌Vol.1には、「実は新鉱物だった。現在研究が進められている」とのコメントも寄せられた。しかし、今年に入ってある標本商さんに聞いてみたら、やっぱりバラ輝石だったようですね、とのお話だった。鑑別を巡る混乱を、鉱物たちはそっと笑っていることだろう。
「名前よりも、私たち自身をよくご覧なさい」と。シェークスピアをもじって言えば、「バラ輝石は、他の名前で呼ぼうと、やはり美しい薔薇色である」

この石は、風化に弱く、地表に晒されると年月とともに黒ずんでくる。ビタミンCを溶かした溶液中に漬けておくと、再び色が蘇るそうだ。まだ試してないが、忘れないうちに書いておく。

追記: 現時点ではパイロクスマンガン石として決着がついたというのが大方の見方である。(2017.5)
補記:バラ輝石とパイロクスマンガン石はいずれも MnSi3 を基本とする鉱物で、組成は前者が (Mn,Ca)(Mn,Ca)Mn3(Si5O15) 、後者が MnMn6(Si7O21) と書かれる。外見は同じで組成もほぼ同じだが、バラ輝石は天然ではつねに少量のカルシウム分を含んでいる。逆にいうとカルシウム分を含まない純粋な珪酸マンガンの原子配列はパイロクスマンガン石型と考えられる。また石灰岩起源のスカルン鉱床にはバラ輝石は出てもパイロクスマンガン石は出ないと考えられている。(バスタム石も出ることがある)。下の画像(ペルー産)のような標本は、まずバラ輝石。
なお純粋物の合成実験ではパイロクスマンガン石型の配列は低温高圧側で安定、バラ輝石型は高温低圧で安定という。

cf.No.771 バラ輝石

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