138.モンゴメリー石 Montgomeryite (USA産) |
鉱物大好きオジサンだったアーサー・モンゴメリーという先生が、友人のエドウィンと一緒に、ユタ州フェアフィールドの燐酸塩鉱床を掘っていて発見した鉱物。1940年に命名された。この時、採集された結晶は、淡い緑色をしていた。バリスシア石の中に、その変成物として混じっていたというから、まあ、そんな色だったのだろう。
ところが、1981年、チップトップ・ペグマタイトから出た結晶は、写真のように上品な赤い色であった。微量のマンガンを含むためで、原産地標本とは好対照。全然違うじゃ〜ん、という感じだ。ただし赤紫色になったバリスシア石(やはり微量のマンガンの影響)もあるので、鉱物の色というのは、一概にこうだと言い切れないものである。
チップトップロードは、1880年代にスズ鉱山として始まったが、あまり儲からなかったらしい。1925年からは、トリフィル石(リチウムの燐酸塩)を採掘したが、売り先を見つけるのが難しくて挫折。その後
60年代には長石を掘って凌いでいたが、70年代に入って閉山された。81年から
82年にかけてモンゴメリー石が出た頃は、再び長石や緑柱石を掘っていた。80種類に及ぶ鉱物の産出を記録し、そのうち
54種が燐酸塩、新鉱物が 8種類も見つかったというから、鉱物学的にはかなり興味深い産地である。しかし、商業ベースには乗らず、数年後にまたもや閉山、坑道も水没してしまった。
珍しい鉱物が出るだけでは、なかなかお金にならないのね。
追記:さまざまな希産種の燐酸塩鉱物を産する土地としてはドイツのハーゲンドルフ(cf.
No.133)
、そしてニューハンプシャーのパレルモ#1 採石場(cf. No.136)が有名で、これに次ぐのがサウスダコタのチップ・トップ鉱山と言われていた(もっとも1980年代のお話だが)。かのブラックヒルズの南稜をなす「喜び谷」と呼ばれる眺望の美しいところである。
1981-82年にかけて地元の鉱夫らが南側の底部にあったペグマタイトの露頭を爆破して浚い上げた時に、50種をこえる燐酸塩が記録された。採掘箇所の大きさは
60x120m、深さは42mあったが、その後休山するとほどなく水没した。
チップトップ産の燐酸塩鉱物は初生と二次生成のものとに区分出来る。前者には弗素燐灰石、ヘテロス鉱、モンブラ石、トリフィル石などがあり、本鉱は後者に含まれる。原産地鉱物にアール石
Ehrleite、フランソレット石 Fransoletite
(及びパラフランソレット石)、ヤンス石 Jahnsite-(CaMnMg),
Jahnsite-(NaFeMg)、パハサパ石 Pahasapaite
(「パハサパ」は先住民がブラックヒルズを呼んだ語)、ロバーツ石
Robertsite (及びパラロバーツ石)、セグラー石 Segelerite、チンズレー石
Tinsleyite、ホワイト石-(CaMnMg)
がある(現在の分類法では11種)。
モンゴメリー石は組成 Ca4MgAl4(PO4)6(OH)4·12H2Oの水和水酸燐酸塩。チップトップではホワイトロック石と相前後して生成しており、ロゼッタ状の本鉱を無色透明のホワイトロック石が完全に覆っていることがある。濃赤色のロバーツ石やオリーブ緑色のミトリダート石を伴うことも多い。ほかにフェアフィールド石、イングリッシュ石などとも共産する。(2019.5.5)