148.セイルズ石 Salesite   (チリ産)

 

 

見た目は、どうしたってヨウ素酸塩には見えないでしょ。そこが策略なんだな。

セイルズ石−チリ、チュキカマタ産

 

美しい青緑色をした銅の二次鉱物。1939年、アナコンダ・カッパー・マイニング社の地質担当主任、レノ・H・セイルズに因んで命名された。

特に見栄えはしないが、珍しいヨウ素酸塩鉱物なので載せておく次第。
ヨウ素というと、私はどうしても、ゼーリガー石(No.95)みたいな黄色やヨードチンキの色を連想する。こんなに綺麗な青色に化けるなんてまったく不思議だ。その上、例の匂いもしないのである。

購入したときの標本商さんのあおり文句。
「典型的な産状を示す古い標本。今日では、まったく入手しようのないもの」
しかし、インターネットの発達はこうした予想を簡単に越えてしまう。この間検索してみたら、ある大学の古いコレクションがちゃんと売りに出ていた。

追記:チュキカマタ鉱山については、 No.577No.866 参照。セイルズ石は上部酸化帯が採掘されていた時期に、剥ぎ取られた古い(酸化帯の)ズリ石から発見された。当時銅山は私企業のアナコンダ社が経営していたが、1971年に国営化されてコデルコ社の所有に帰した。
セイルズ石は銅の水酸ヨウ素酸塩で組成Cu(IO3)(OH)。鉱山ではかつてヨウ素鉱物の濃集した箇所を掘ることがままあり、発破作業で生じた爆煙が昇華したヨウ素のために紫色に煙ったという。また褐鉄鉱(特にイリデッセンスを示すもの)の標本はたいていヨウ素臭がしたという。(2019.5.1)

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