215.トパーズ Topaz   (ミャンマー産)

 

 

ペグマタイト鉱物 -ミャンマー、マンダレー区モゴック産

 

今さらなんだけど、「ペグマタイト」(Pegmatite:鬼御影)について。

ペグマタイトとは粒の粗い大きな結晶を示す火成岩のことをいう。マグマが地下で冷え固まってゆくとき、水分や炭酸ガスを多く含んだ部分がなかなか固まらず、地殻の裂け目にそって移動している間にゆっくりと晶出して数センチ〜数メートルに及ぶ巨大な結晶となった。ペグマタイトの内部には、放出されなかった揮発ガスや水が「溜り」を作っていることがあり、そうした部分(後に晶洞:ガマ:ポケットとなるが、この時点では必ずしも空洞でない)の周りにはマグマが固化する過程で排除されたさまざまな元素(異物)が集まって、ここを最後の砦として、トパーズ、蛍石、その他各種の珍しい希元素鉱物となって姿を現す。溜りに向かって比較的自由に成長したこれらの鉱物は、自形面をもった美しい結晶となる。ペグマタイトが結晶鉱物の宝庫と呼ばれる由縁だ。

ペグマタイトをつくる岩石の代表は花崗岩で、しばしば巨象花崗岩または文象花崗岩と訳される。(古い)訳名の「鬼御影」は、花崗岩の別名、御影石(兵庫県の六甲山に産する)に拠る。
採集家の立場からすると、美しい結晶を見つけたいなら、まずは花崗岩の露頭(むきだしになった場所)を探すことになる。次に結晶(石英・長石・雲母)が粗くなった部分を探す(普通は脈になっている)。さらに脈がレンズ状に膨らんでいる部分を見つける。おそらくそこには空洞が隠されているだろう。バールなどで脈を叩き割り、空洞が開けばおもむろに鉱物採集にかかる…。

写真の標本は典型的なペグマタイト鉱物の集塊。もこもこした長石、山形になった水晶、親指のようなトパーズ、暗色の雲母が見える。水晶とトパーズでは、トパーズの方が屈折率が高く、より燦めいてみえる。はずだが、分かるだろうか?

 

補記:御影石の別名が花崗岩というべきかもしれない。幕末から明治初期の辞書・地質学書は granite の訳に花崗岩をあてて、ミカゲイシと読ませる例が多い。花崗は「花の岡(崗は岡の俗字)」の意だが、花にして剛の意を含めて、石材としての美しさと強さを表している。日本で作られた語らしいが、中国で美しい模様のある石を指す花石という語がもとになったともいう。 Granite は粒状を意味する granitoからきて、その元はラテン語の granum (穀粒)。因みに雲母を指す mica も穀粒の意だがバラバラの小さな粒/小片の含み。

なお、ミカゲ石の名の由来を六甲の御影(地名)に求めるのはよいとして、その元にはおそらく古代の巨岩信仰・山岳信仰があったと思われる。山岳の花崗岩の巨石を神仏の宿りとみなして御影石・御像石と呼んだ例が残っている。cf. No.933 (金峰山の御影石)

補記2:稲垣足穂は「水晶物語」に、授業で国語読本の課題の火山の章が朗読されたとき、級友が花崗岩を「みかげ石」と読んだので手を上げて訂正を求めたところ、先生に一喝されて退けられた思い出を書いている。先生自身が読み直した時も、わざとらしく「みかげ石」と発音した、と。しかし足穂の気持ちとしては「それでは…橋梁のアーチになったり、公会堂の玄関階段に使われたりする、黒雲母火成岩の品位が損なわれる」のであった。彼にとって花崗岩はかこう岩と呼んでこそ、その面目を正しく表現したことになるのだった。

追記:モゴック産のトパーズは1990年代から西洋市場に出回り始め、その量は2000年代に入ってさらに増したと言われる。ほとんどの標本はモゴックの町の西16kmにあるサカンギ鉱山の風化したペグマタイトに産するものとされる。崩壊した砂礫層中からも分離結晶が採れるが、高品質の結晶はやはりペグマタイト中の巨大な晶洞から出る。
沖積世(1500-2000万年前)に貫入したカバイン花崗岩体に伴うペグマタイトの構成鉱物はシンプルで、長石、水晶、灰色の白雲母などからなる。無色の蛍石がついた標本もある。採集された標本はたいてい中国からきた業者が買い付けてゆき、中国産として市場に出ることがしばしばという。 cf. No.45 トパーズ(中国産) (2020.5.15)

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