364.方ソーダ石 Sodalite (ボリビア産)

 

 

ソーダライト -ボリビア、コチャバンバ東方100キロ、セロ・サポ産
淡茶色の部分は菱鉄鉱、 淡緑色はアンケル石

 

南アメリカ大陸には古く紀元前に始まるモチェ文化、11〜16世紀頃のインカ文明等が知られており、これらの遺跡の墳墓から青い石を使った副葬品が見つかっている。以前はラピスラズリと考えられていたが、実はほとんどがソーダライトを始めとする別種の青石であるらしい。
ソーダライト(方ソーダ石)は、ラピスラズリと同じ准長石(フェルドスパトイド)グループの鉱物で、両者の違いはアルミノ珪酸が作る基本結晶構造内に、ソーダライトではナトリウムと塩素が入っており、ラピスラズリではさらに硫黄が加わることだ(⇒No.250 参)。後者はかなり特殊な生成条件を満たす必要がある。

南米文化圏のソーダライトは、ボリビアのラパスから南へ150キロほどのセロ・サポから供給されたことが、蛍光X線分析法を用いた成分(量)比較によって明らかにされつつある。ボリビアだけでなく、ペルー、エクアドルあたりまで広く流通していたらしい。

ソーダライトは同じアルカリ准長石である霞石(かすみせき)等の火成岩と共産することが多いが、ボリビア産のものは鉄の炭酸塩である菱鉄鉱やアンケル石(苦灰石のマグネシウムの一部を鉄に置換した炭酸塩に相当)を伴っており、地下深部で生成したカーボナタイトと呼ばれる炭酸塩質の特殊なマグマを起源に持つと考えられている。

参考:No.81 方ソーダ石  

補記:蛍光X線 
十〜数十KeV程度のエネルギーを持ったX線を鉱物試料に照射すると、成分中の各原子の内殻電子が励起される。励起された電子はエネルギー準位の高い軌道に遷移した後、再び元の軌道に戻ってくるが、この時、軌道準位差に応じたエネルギー量(波長)の光子を放射する。これが蛍光X線と呼ばれるもので、その波長は元素及び殻準位差に固有であり、一方発生した蛍光X線の相対的な量は試料中の元素の存在率を反映している。そこで波高弁別の出来る検出器を使って蛍光X線を分析すると、含有元素とその存在比率を計算することが出来る。
ちなみに野外使用可能なポータブル型分析計は、アルミニウムやマグネシウム、珪素といった低原子番号の(しかし岩石を構成する基本成分である)元素を検出することが出来ないので、鉱物種の同定には向かない。この場合は真空引きして測定する据え置型の分析計が必要になる。
補記の補記:ポータブル型分析計の進歩が著しい。最近になって使用前に装置内部を真空引きするタイプが現われ、Al,Mg,Siまで検出できるようになった。いったん真空引きすると3時間くらいはそのまま使用できるらしい。Beより低い番号の元素はまだダメ。(2007.1.30)
その後、検出器の性能が改善されて、ポータブル型でも大気中でAl が計測できるようになっている。(2021.8.14)

 

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