379.クリソプレーズ Chrysoprase (ポーランド産)

 

 

Chrysoprase

クリソプレーズ 白色石英のパッチを伴う
−ポーランド、Szklary産

Chrysoprase

緑玉髄(手前は研磨面)−オーストラリア、クイーンズランド州産

 

カルセドニー(玉ずい)の一種で特にクリソプレーズと呼ばれるもの。
語源の「クリソス/金色」と「プラシノス/西洋ネギ(リーク)」(→のような緑色)から意訳すれば金緑の石となるが、ギリシャ・ローマの昔にはペリドットを指していたらしい。

18世紀の中頃、ポーランドのシレジア地方コゼミッツに鉱脈が発見されたのを享け、ビクトリア朝時代を彩る石のひとつとして広くヨーロッパに流行した。
この石は蛇紋岩の分解した岩脈中に産し、分析すると 0.5〜1.0% の酸化ニッケルを含んでいた。発色の原因はニッケルの含水珪酸塩と考えられ、長く使って変色した石でも水につけると最初に近い色を取り戻したという。
その後、鉱山が閉鎖されると供給が絶たれ、20世紀前半の宝石書には、市場に現れるのは稀、と記されている。

しかし1960年代にオーストラリア、クイーンズランド州中央部のマールボローで鉱脈が見つかり、以来再び豊富に出回るようになった。当地最大の鉱山は香港資本が握っており、採掘されたクリソプレーズは加工販売のためすべて香港に送られる。現在では年産1億円程度の原石が安定供給され、需要に応じて出荷量がコントロールされているという。
近年、南・西オーストラリアの各地に相次いで鉱脈が発見されているものの、供給量は依然マールボローが大勢を占める。

オーストラリア産のクリソプレーズは、超塩基性の蛇紋岩が風化(酸化)によりラテライト化した表土層の下で見つかっている。風化作用によって鉄酸化物が生じラテライトを形成する一方、珪酸分やニッケル分が分離されてラテライトの下部に沈降してゆく。そして適当な反応媒介鉱物と出会って(置換して)脈やノジュールを形成するらしい。(マグネサイトの層中に産する)。
発色原因はやはり微量のニッケルだが、最近の研究によれば、タルクの類似鉱物でニッケルに富んだウィレムジー石が微小板状片として含まれることに起因するとの説が出ている。タルク(滑石)は蛇紋岩の風化によって得られる鉱物だから、なるほど、それらしい産状だ。

  cf.  Willemseite: (Ni,Mg)3Si4O10(OH)2 ⇔ Talc: Mg3Si4O10(OH)2 

爽やかな緑色のため、ひすいの代用品としても扱われる。
鉱物ショーでおなじみの翡翠専門店で、手頃なひすいが欲しくて予算を言うと、店主にこの石を薦められたことがある。
さすがに「それはひすいじゃなくて、クリソプレーズでしょう」と撥ねると、店主「オーストラリアひすいですよ」と愛想笑った。

参考:
  番外.緑玉髄の猿猴 (香港の業者が加工したクリソプレーズ)
      No.336 珪ニッケル鉱 (蛇紋岩の風化した下層に産する)

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