390.球状菱鉄鉱 Sphaerosiderite (ルーマニア産) |
菱鉄鉱の針状結晶が放射球状に成長したものを、特に
Sphaerosiderite (Spherosiderite)
と呼んでいる。水分を多量に含む地相で、その水分が素早く失われてゆくような環境で生成する。
パイア・スプリがどんなところだかよく知らないのだが、この産地に典型的な硫化物と石英の母岩上に産するという。凡な鉱物に見えて、案外、標本は出回っていない。
同族の菱亜鉛鉱 ZnCO3
や菱マンガン鉱 MnCO3
(あるいは方解石 CaCO3)では、この種の形態は珍しくないというのに?
cf. No.199 菱鉄鉱 FeCO3
補記:アップして1週間後に、HNHMで、輝安鉱結晶の端に本鉱が載った同産地標本を見つけた。
補記2:マラムレシュ県のバイア・スプリエについては No.71 参照。産地では水晶上に結晶した菱面体の菱鉄鉱が出るが、この標本のような独特な球顆状のものが銘柄品で、 Sphaerosiderite と呼ばれて古い博物館の所蔵品に収まっている。概ね 20世紀に入る以前の採集品だが、大戦後の鉱山開発ブームでルーマニア産標本のリバイバルが起こった時(1960年代以降)にも若干数が市場に出回ったという。(2022.1.1)