415.紅柱石 Andalusite (USA産ほか) |
紅柱石は、珪線石、藍晶石と同質異像(ポリモルフ)関係にある鉱物で、いずれもアルミニウムと珪酸分とに富んだ変成岩中に生じる。温度と圧力の違いによって、どれが出来るかが概ね分かっているため、生成した環境条件を判断する手がかりに用いられる。ただし環境の変化に応じて、この3種間でさらに入れ替わりが起ることもある。紅柱石は藍晶石よりも低い圧力で、珪線石よりも低い温度で、つまりは低温・低圧のときに安定であり、3種の中ではもっとも普通の鉱物である。大気圧下では700℃近い高温に至る耐熱性を持っているため、特殊磁器の原料として重要。
上の標本はカリフォルニアのホワイトマウンテンにあった紅柱石鉱山に産したもの(1940年頃の採集品)。天藍石との組み合わせは本鉱の特徴のひとつといえる。この産地はかつて無色透明のアウゲライトが出て、レア・ジェムとしてカットされたことでも有名。私は長らく実物をみたことがなかったが、先般ハーバードでお目通りした。博物館の存在意義ってこういうところにあるよな。(⇒参照)
産地の鉱山名にシリマナイト(珪線石)と銘打ってあるが、実際に採掘されたのは紅柱石で、珪線石はほとんど出なかった。一説には名前の響きがアンダリュサイトよりよかったので経営者がそう呼ぶことに決めたという。(シリマナイトの方が磁器業界に知名度があった?)
下の標本はペグマタイトに出たもので、鋼玉(コランダム)を伴っている。No.414に書いたことから判断すると、この組みあわせは地下深部の高温環境で熱水の酸性度が高いときに出来るらしいが、この産地ではどうだったのだろう?
くすんだピンク色はペグマタイト中の結晶に特徴的で、アルミニウムの一部がマンガンや鉄で置換されるためという。この色と柱状結晶をなすことが和名の由来となっている。
ちなみに雲母片岩中の紅柱石に共産する鉱物としては、菫青石がよく知られている。
補記:本鉱や緑簾石、電気石など吸収の強い鉱物では、透明結晶の光軸方向の薄片を目に近づけてみると、自現干渉像が観察できる。眼の水晶体が収斂光を作るため。
補記2:日本で紅柱石からサファイアが発見された初めは福島県石川地方大森田のペグマタイトで、小学校の南の小山に小粒を含有して出たという。
補記3:チャンピオン鉱山は 1919年に発見され、20-30年代にかけて紅柱石を商業的に採掘した。ルチルやアウゲライト、また各種の希産燐酸塩鉱物を出したことで知名で、70年代にも依然、採集が可能だったという。