436.ペクトライト Pectolite (USA産)

 

 

ぶどう石(淡緑色)上のソーダ珪灰石(白色) 
−USA、ニュージャージー州ハドソン郡グッテンバーグ産
  

ニュージャージー産のソーダ珪灰石(ペクトライト)の標本で、ジョー・サイレンのコレクションだったもの。彼が集めた標本は、死後、その一部がスターリンヒルの鉱山博物館に寄贈されてオークションにかけられたほかは、一括して売りに出され、ある個人蒐集家の手に渡った。蒐集家はしかし、フランクリン/スターリンヒル、ツメブ、ラングバンといった特定の産地の標本だけが目当てだったので、その余については折々市場に売り戻しているらしい。鉱物学者を呼んで標本箱毎に値踏みさせ、それから鉱物商を呼んで然るべき値段で買い取らせているとかで、600箱ばかりあるコレクションのうち、およそ半数がすでに捌かれた。上の標本もそうして廻り回ってきたもの。
ジョーは標本と標本ラベル(自分で作ったのと、もしあれば入手元の標本商製の)とに通し番号をつけたが、この標本には#7258 が振られている。ニューヨーク市79番ストリートの向かい、ハドソン川を挟んでニュージャージー側の建設現場で採集されたもの。

ペクトライトはNaCa2(Si3O8)(OH)の組成を持つ沸石の類縁鉱物で、その名はギリシャ語で緻密を意味するpektosに由来する。緻密な繊維状の塊として産出することが多いためで、この種のものは軟玉に匹敵する強靭さを示す。また針状の結晶が球状に集合している場合もあるが、こちらは結晶に具わった2方向のへき開面で砕け、絹糸光沢のある破面をみせる。
玄武岩の晶洞中に熱水作用によって形成されるときは、沸石類やぶどう石、方解石、石英などを伴うのが一般的な産状で、このほかアルカリ火山岩中の造岩鉱物として雲母をまとったかんらん岩を伴って産したり、変成岩中に生じたり、また蛇紋岩中の空隙を埋めていたりすることもある。
ニュージャージー州は最良の標本産地のひとつに目され、パターソン付近では玄武岩中に仏頭状の集合体として、フランクリンでは大理石中に自形結晶をなして産する。通常、白〜灰色だが、マンガンを含んでピンク色になることもある。
和名はその成分と珪灰石タイプの結晶構造からソーダ珪灰石と、または産状とから古く曹灰針石と呼ばれた。
珪灰石アルチニー石に似るが、これらには沸石を伴う産状はないという。

cf. No.115 ラリマー

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