473.青水晶 Blue Quartz (スペイン産)

 

 

Blue Quartz 青水晶

青水晶 −スペイン、アンダルシア州マラガ産
(撮影 ニコちゃん /実物より明るいめ)

 

スペイン・アンダルシア地方のマラガやカディスには、いろんな類の水晶−煙水晶、アクチノライトや緑泥石を含む緑水晶、エリナイト(アエリナイト)を含む青水晶−が出るが、なかで青水晶は世界でもほかに例のないユニークなものだ。
一帯は三畳紀の地層が広く分布し、粘土や石膏が渾然と入り混じった蒸発性の堆積岩層に Ophite と呼ばれるある種の火成岩(輝緑岩やウラライト輝緑岩)が貫入している。青水晶は レンズ状〜テーブル状のブロックをなすOphite の空隙に産するのだが、これはエリナイトという珍しい炭酸塩鉱物の生成が Ophite の介在の下に起こるからだという(ちなみに煙水晶はブロックの外部に生じている)。

青水晶は柱面のないそろばん玉状の結晶を作るのがひとつの特徴で、形状から高温石英(ベータ石英)として生成したように思われるが、ほかに擬似六面体(サイコロ状)の結晶形もあることから一概には言い切れないらしい。大きさはおおむね5ミリ〜15ミリで、色目は深青色〜空色。
マラガ産は早く1910年に記録があり、カディス産は1985年になって文献に現れる。その間あまり注目されなかったようだが、1988年にさらに複数の産地が発見され、発見者の一人がMR誌Vol.27-No.2(1996)にこの特殊な水晶についての詳細な情報を寄稿したため、今ではすっかり有名標本となっている(上述の内容はこの寄稿に拠る)。

一方、青水晶に含有されるのはエリナイトでなく、マグネシウム・リヒター閃石であるとの説もある。たしかに水晶に含まれていない部分の雰囲気はエリナイトよりリヒター閃石に似ている。ただ、リヒター閃石がナトリウムを含むアルカリ角閃石の一種であるのに対し、青水晶に随伴する(らしい)、エリナイト、ぶどう石、スコレス沸石、あるいはアクチノライトといった鉱物は、カルシウム、マグネシウム、鉄、(アルミノ)珪酸を成分とするものであって、ナトリウムを要件としないことを考えると、いかにも唐突の観がある。
Minerals and their Localities (2004)には、「マラガのエリナイト産地では、これに起因する青水晶が出る」とある。どちらだか、私には分からない。
ちなみにリヒター閃石は近年人気上昇中らしく、ダイアナ石の青色もこの鉱物によるとの説が浮上している。(いずれにしても青の発色原因は3価の鉄イオンか?)

Ophite: 輝緑岩やウラライト輝緑岩からなる岩体で、短冊状のプラジオクレース(斜長石)の結晶が局部的または全体的に輝石結晶中に含まれる。

補記:マラガ産とよく似た青色の水晶は、ブラジルやアフガニスタンなどからも産出しているが、前者はインディゴライト(電気石)、後者はクロシドライト(角閃石系の青石綿)を含有していることが青色の原因という。これらは柱面が普通に発達している。

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