474.菫泥石 Clinochlore var. Kaemmererite (USA産) |
菫泥石はクロムリッチなクリノクロア(緑泥石)の亜種で、もっぱら超塩基性岩中に濃集したクロムの鉱床に、自然な脱水作用が働いて生じるものだ。トルコ産の結晶があまりに有名なので、他産地の標本を市場で見かける機会は少ないが、種としてはさほど珍しいものでない。カリフォルニアのクロム鉄鉱床には無数の産地があるというし(⇒No.396
CA州産標本の紫色部分)、ウラル、日本などにも産する。
上の標本はペンシルバニア産だが、トルコ産とはまた違った風情があって、コレクター心がくすぐられる。ここは蛇紋石産地として著名な土地だそうで、ウッドのクロム鉱山という名前が示す通り、蛇紋石に伴うクロムを掘る鉱山があった。
このテの(旬でない)あまり数が出回らない標本は、通例、愛好家のコレクションが放出される時がめぐり逢いのチャンスで、これもあるアメリカ人コレクターの蔵品だったもの。
自然界に紫色(自色)の鉱物は少ないそうだが、本鉱(の粉末)はきれいな紫色で、それがクロムによる発色だという知識もあわせて、なかなか味わいある石だ。堀博士は「魅力的な性格俳優」と語っている。学名(亜種名)はロシアで鉱山局長を務めたケンメレルに因む。
cf. No.892 補記3