499.軟玉 Nephrite (USA産) |
日本でカリフォルニアの玉といったら、一番有名なのは多分カリフォルニアひすいで、次が結晶質のひすいで(有名なのは鉱物マニアの間だけ?)、その次にやっと真正の玉、軟玉にお鉢が回ってくるような気がする。
でも軟玉はカリフォルニアの海岸沿いに各地で採集することが出来るので、地元では拾いにくる人が一番多いポピュラーな石だ。
特筆すべきは、世界的にわりと珍しいぶどう状の塊が出ること。1950年代後半、ビッグ・サーに近いジェード・コーヴでデイトン夫妻が発見したのをきっかけに、以来数多の人々がかの地に採集を試みた。しっとり感のある玉髄といった面持ちのもこもこした玉。色は濃い緑からアップルグリーン、青みを帯びたり黄色みがかったりといろいろある。亜透明。強い光を背後からあてるとやや透けてみえる。地上で拾えるものは70年代までにほぼ採り尽くされたが、今でも海中から優品を拾い上げることが出来るという。カリフォルニア州の他のエリア、オレゴン州、ワシントン州(つまり西海岸の諸州)でもぶどう状の軟玉は採れるが、いささか透明感に乏しい。
上の標本はジェード・コーブと同じモントレイ産。業者さんによると「とあるぶどう園」から出たもので、質もかなりよい。
モントレイと聞いてまず僕の頭に浮かぶのは、「ホワイト・ジンファンデル」というカリフォルニア産のテーブルワインである。むかし、この甘くて芳醇なほんのりピンクの、いろんな意味でお手頃なワインが僕はとても好きだった。その実がたわわになる農園の土に、ぶどう状の石も眠っていたかもしれないと、我ながらすんなり妄想が繋がる。
ジンファンデルの露が地に雫たり、地中に凝って玉と化した星月夜、かすかに海風の吹く丘を、君と並んで歩きたい、なんちてか。
石拾いに。