496.ひすい輝石 Jadeite (USA産) |
カリフォルニアの海岸地方にはひすいの採れる場所がいくつかある。なかでもサン・ベニト郡南部のクリア・クリークはもっとも重要な産地だ。
ここは1950年にカリフォルニアで初めてひすい(転石)が発見された土地で、その後すぐに初生鉱床が見出された。ニュー・イドリア蛇紋岩の山塊に含まれ、フランシスカン・シリーズの岩石や無数のゼノリスが崩壊し破断された地層の中に、ひすいが混じっている。
このひすい輝石は、微細粒の曹長石やクロス閃石、藍閃石とともに変成作用を受けて生成されたもので、こうした岩相の境界部分では"角閃石−曹長石片岩"から"曹長石−ひすい輝石片岩"への遷移がみられ、その中に緑色繊維状の"透輝石−ひすい輝石"に富んだ領域が形成されているという。(と、書いていてなんのことやら…とつぶやいているわけだが)
透明度が低いため宝飾用途には向かないが、結晶質の標本があって鉱物愛好家には面白い。時に自形面の見られる標本もある。
上の標本では脈状のひすいが蛇紋岩の空隙を埋めている。
ちなみに日本でも親不知海岸のひすいの中に部分的に隙間があって自形結晶の見えるケースがあり、また長野県の栂池では脈状のひすいが産する。いったんひすいが出来てから割れ目が生じ、そこに熱水が入り込んでさらにひすいが晶出したといわれている。こうした生成条件では、No.492(豆ひすい)で書いたような石英を伴う反応を考える必要がない。
白いひすいはほぼ端成分に近い純粋なもので、局部的に曹長石やソーダ沸石、トムソン沸石に置換されている。破砕された片岩類をひすいが埋め固めていることもあり、輝石類や緑色のクロロメラナイト、トムソン沸石を伴うハイドログロッシュラー、ソーダ珪灰石、あられ石などが接している。これらはひすいから変成したものと考えられている。
カリフォルニアのほかの産地としてはメンドッチーノ郡リーチ・レイクが有名で、ここでは軟玉とひすいとが共産している(透輝石も)。またロディン石、ハイドログロシュラー、ベスブ石などがソーダ珪灰石、ゾノトラ石、トムソン沸石、クリソタイルなどと混合している。
要するにこれらの鉱物が、ひすい(の生成)と関連の深い鉱物なのだといえるだろう。