498.アフリカンジェード African Jade (RSA産) |
南アフリカ周辺(トランスバール〜ジンバブエを含む)から軟玉に似た、さまざまな名称の石が市場に出ている。
上の標本はバッドストーン(バズストーン Buddstone)またはベルデ石(ヴァーダイト、ベルダイト Verdite)という現地流通名のある石。両者は一応別モノらしいが、区別はさほど明確でない、というか明らかに混同されているように思われる。もっともベルダイトとはそのまま「緑の石」の意だが。
一説によると、ベルデ石はふつう暗い緑色で、バーバートンのグリーンストーン・ベルトに属する超塩基性岩(特に蛇紋岩)の中や、ネルスプルート底盤の断層帯にレンズ状に含まれて産する。当初は蛇紋岩の一種と考えられていたが、最近は高品質のベルデ石はほぼクロム白雲母(フクサイト)だけで構成された微結晶集合体とされている。硬度は3.5程度で軟らかく、磨くと爽やかな緑色に光る。純度の低いものはコランダム、真珠雲母(Margarite)、緑泥石、曹長石、石英、滑石、ダイアスポアなどを含み、硬度、色調にさまざまな変化が生じる。風化に弱い。
バズストーン(Buddstone)は、同じくグリーンストーン・ベルトの北部地域に出て、やはり暗緑色の石だが、こちらはクロム白雲母を局部的に含むチャート(珪岩)だという。成分的にはアベンチュリン(インドひすい)と同じようなものか。おそらくベルデ石とは販売主が異なるのだろう。
1970年代頃には当地の石綿鉱山などでさかんに採集された。暗緑色のほか、オフホワイト〜灰色〜茶色〜褐色〜ライム緑〜リンゴ緑などさまざまな色あいがある。なかで特に透明度の高い暗緑色の石は、ロイヤル・サーペンティンの名で知られたという。でも、これは実際は蛇紋石の一種、ボウエナイトだ。
下の標本は緑色塊状のグロッシュラー(グロシュラーライト)。日本では一般にアフリカン・ジェードあるいはトランスバールひすいとして知られる(cf.
No.477)。加水作用を受けて水酸基を含んでいるため、ハイドロ・グロシュラーとも呼ばれる。黒い粒状のインクルージョンはふつうクロム鉄鉱または磁鉄鉱。画像の石は透明度が低いが、透明度の高い石もある。
先にカナダ産の軟玉やカリフォルニア産のベスブ石(カリフォルナイト)を紹介したが、こうしたジェード類との区別は、肉眼的にはなかなか難しいケースが少なくない。