550.ベルトラン石 Bertrandite (ブラジル産) |
ベリリウムを含む鉱物はおよそ100種類ほどあるそうで、なかで名の通った種というと、ベリル、クリソベリル、フェナス石、ユークレース、そしてベルトラン石といったあたりだろうか。堀博士は後ろ3者をベリリウム珪酸塩鉱物の3兄弟と呼んで、ベルトラン石を末弟に配している。理由は、「体はいちばん小ぶりであるが、器用にあちこちに出現する」から。この石は産状が広いが産量は少なく、兄2人が数センチクラスの結晶を作ることがあるのに対して、ミリレベルの結晶として見つかる。
とはいえ、アメリカには例外的に大量のベルトラン石を含む大規模な鉱床があり、そのためベルトラン石はベリルに次ぐ重要なベリリウム資源と目されている。
原産地はフランスのナント付近で、1883年、発見者である鉱物学者エミール・ベルトランにその名が献じられた。ペグマタイトや熱水脈に産し、融蝕の進んだベリルの結晶表面に貼りついたり、ベリルを置換して生じている。組成式 Be4Si2O7(OH)2。ベリルが分解・変化して生じることを反映し、水酸分を含んでいる。斜方晶系の鉱物で、わりと多様な結晶形をとる。色は普通、無色〜淡黄色。硬度6−7。
この標本は小さな結晶がびっしり群れたもの。どこがベルトラン石かと問われれば全体と答えられるが、個々の結晶をよく観察するにはルーペや顕微鏡の力を借りたいところ。最近はマクロ撮影可能な高画素のデジカメが普及しているので、思い切りレンズを近づけて撮影すると、顕微鏡をしのぐ拡大像が得られる。微小結晶の観察は随分楽になっている。とはいえ、デジカメ画像はあくまで2次元。双眼実体顕微鏡の立体的な映像美には遠く及ばない…