551.アゼツライト Azeztulite (USA産)

 

 

アゼツライト Azeztulite

アゼツライト−USA、ノースカロライナ、(初号ホール)産
(撮影 ニコちゃん)

「アゼツライト」 ヘブン・アンド・アース社の商品カード
その成り立ちと効能が書いてある

 

アゼツライトとは何か。これを鉱物(あるいは鉱物標本)だと主張するのはおそらく正しくないだろう。アゼツライトはある種の波動というかエナジーのこもった道具であり、その力を引き出し利用するための器である。古い言葉で言えば、呪い(まじない)具であり、洗練された言い方をすればスピリチュアル・グッズであり、私を含めたあるタイプの鉱物愛好家にとって身も蓋もない表現をさせていただくならパワーストーンである。
ネットのうわさでは「メタバグ」という説もあるそうです。(←ヤサコ)
その力は地球外生命あるいは宇宙の精神的存在によってチャージされている。彼らは非物質的な、名前を持たないソウル(霊)なのだが、その集団はしかしアゼツという名前で知られている。
アゼツライトにこめられた力はこれまた無名の(≒形容しがたい、名づけようのない)光であり、アゼツライトはアゼツたちが相互に交流したり、他の次元の存在(人間とか)と交信するときの局地的な接点、いってみればケイタイ電話のようなものとして機能させるべく用意されたアンカーポイントだということである。器として特に選ばれ、霊的に調整された物資なのだ。
異なる次元間を橋渡すアゼツライトは、それを用いる人間が高次エネルギー(そして霊的存在)と接触することを可能にし、人間の精神と肉体組織を光で満たす。光の受け入れを妨げているブロックを消滅させる。結果として知覚を拡大し、健全な成長を促進する。その人間が霊的に進化すれば、さらに高いエネルギーを流す。そういった石なのである。

アゼツライトは1991年に発見された。あるチャネラーがアゼツとチャネリング(交霊)を行ったときに石の存在を知らされ、あるパワーストーン研究家はその石がノースカロライナの某所にあるとの隠喩的な導きを受けて大地を掘り、清浄な輝きにきらきら光る白〜淡桃色の透明石を得た。それがアゼツライトなのであった。

私がアゼツライトについて知っていることはわずかである。その名に気づいたのはほんの数年前のことだ。当時、淡いピンク色をした小さな磨き石が、インターネット上の石のショッピングサイトや愛好家のコレクションサイトにしばしば載せられていた。ピンク色の石は鉱物種を問わずたいへん好ましいもので、多くの人をなぜとも知らず惹きつける。
はじめアゼツライトは強力な波動を宿した正体不明の石だとされ、スピリチュアリティに心を寄せるほどの者、是が非でも手にすべきアイテムだと、その世界のオピニオンリーダー達が託宣していると宣伝されていた。
だが「産地はすでに絶産」で、採集されたアゼツライトはわずか20kgに過ぎず、発見の翌年にはすべて売れてしまったことになっていて、それだけ聞けば手に入るべくもない代物であった。
一方、人気を集める石なれば、誰かが鉱物学的な分析を試みるのは当然の流れで、やがてアゼツライトが普通の石英であることが、どこからともなく俎上に乗った。

その年、ツーソン・ショーでの仕入れを伝えたあるお店のレポートはなかなか愉快だった。河合隼雄なら「ケッサク」と言っただろう。件の店主は引き合いの多いアゼツライトの落穂拾いに、前年に続いて卸元を訪ねたところ、絶産になった最初の産地に代わる第二の産地が、つい最近、同じノースカロライナに見出されたばかりだと告げられ、幸運にも新たな石を沢山仕入れることが出来たのである。新しいアゼツライトは白く濁ったものが多く、人気のピンク色はなかったが、その波動はさらに強力かつ精妙になっていると、卸元は語った。アゼツは地球の各所に用意した石を、人類の成長に合わせて次々と開示する用意があるわけなのだ。
「鉱物学的には水晶(Quartz)だと言われていますが?」との質問には、「そうなんだ。つい最近、水晶だってことが分かったんだ。素晴らしいことだね。」と感激の口調で応えた。
その後、アゼツライトはノースカロライナのみならず、バーモント州やインドのサチャロカなどからも、新たに産出している。アゼツの導きだろう。また物質レベルでは石英の一種であると断りがつくようにもなっている。

ところで新たな動きとして、昨年アゼツライトという名称が商標登録された。
アゼツライトはふつう自形結晶を示さず塊状で産し、その発する高次の波動は別にして、他の産地の石英と区別することが難しい(ふつう磨いてペンダントや丸玉などに作られているので、いずれにしてもほかの水晶製品と形態的な区別はない)。
商標を持つヘブン・アンド・アース社によると、現在アゼツライトとして売られている石のほとんどは別の産地のタダの石英であるという。同社は上の画像のような印刷カードを石に添えて販売しているが、同社の商品のみが本物のアゼツライトであり、真のエネルギーを持っている。商標を使えるのは同社だけという主張ではなく、本来のアゼツライトの性質を具えた石を扱っているのは同社だけだといいたいのだろうが、私としては、アゼツライトを求めるスピリチュアルな人々が自分では石の波動を感じることが出来ない(真贋を評価出来ない)かのように語る、あるいはほかのスピリチュアルな業者にはアゼツにチャネリングする能力も新たにアゼツライトを発見する権利もないかのように語るその言い分が奇妙に思える。

カードには "Genuine Azeztulite TM"と書かれている。ふつう宝石では Genuine は、天然品(合成でない)、人工的な処理を施さず、といった意味に用いられるが、この場合は何を意味するのか。その下に selected, attuned and activated (選別され、調律され、活性化された)とある。最終的に活性化されたものこそが Genuine なアゼツライトだということだろうか。その作業はアゼツでなく、ヘブン・アンド・アース社が行っているというのが主張点なのだろうか。よく分からない。というか、パワーストーン系の記述は、夢の中で書いたような脈絡のない文章が特徴で、ぼーっと催眠状態で読んでいるとさもそれらしいが、論理的に考えようとすると途端に難解になる傾向があって、まるで宇宙人と対話している気分に導かれる。文脈を考えてはダメなのだ。ユングなら、「何をしてもよいが分析だけはしないこと」と言っただろうか。"Feel the Force"(フォースを感じるのじゃ)

上のアゼツライトのカケラはノースカロライナの最初のホールから出た石だという。ピンク色でないのが残念だ。ブラジル産の普通のカケラと変わらない。ちなみに私はこの石を使ってアゼツとコンタクトをとっていない。ただ石として愛でるばかりである。

 

追記:Azeztulite に堕天使アザーゼル (アゼル)の響きを聞くのは私だけだろうか? cf. No.256 杉石(ロイヤル・アゼル/補記2)
追記2:Azoth (アゾット:アゾート)は、錬金術師が諸物を構成する根源的物質(賢者の水銀)として想定したもの。 こちらにも響きが似る。 cf. No.659  1789年、フランスの化学者ラボアジェは、窒素をアゾート (azote)と名づけている。 ギリシャ語で「生命がない」を意味するアゾティコス (azotikos)に因む。

追記3:ヘブン・アンド・アース社は 1986年にロバート・シモンズとキャシー・ヘレン・ワーナーが始めたロックショップで、当初から(霊的に)高次の波動を感じさせる石の取り扱いを旨としてきたという。彼らは瞑想や神秘体験を重んじて、これをビジネスに取り入れた人々で、モルダバイトに始まり、さまざまな高次波動の石を発見して、ニューエイジ的な独自の商品名で市場に紹介している。

アゼツライトは彼らの妹分ネイシャ・アーシャンのチャネリングをきっかけに世に出た石で、1991年、今日ホワイト・アゼツライトと呼ばれる石がノースカロライナ州に得られた。(後年、出版されたポケットブック・オブ・ストーン (2011年 シモンズ)には、最初のアゼツライトはノースカロライナ州の1970年頃の採掘物の中にあった、と書かれているので、あるいは昔に誰かが掘り出した水晶(石英)のロットを仕入れてアゼツライトの名で売り出したということかもしれない。)
ついでバーモント州に第二の発見があり、その後、南インド産の石英がサチャロカ・アゼツライトとして売り出された(クリア、イエロー、ローズなどに区分されている)。

このトピック本文を書いた 2008年は当たり年だったらしく、コロラド州産の石英と苦灰石の混合した赤茶色の塊状石がピンクアゼツライトの名で、ノースカロライナ州産の黄褐色がかった半透明の自形結晶面を持つ水晶がゴールデン・アゼツライト・クリスタルの名で(また黒褐色の雲母やザクロ石混じりの白濁石英塊がサンダ・ローザ・アゼツライトの名で)、インド北部産の塊状石英がヒマラヤ・アゼツライト(ゴールド、レッド、レッドゴールドに区分)の名で紹介された。
その後、彼らはニュージーランドに拠点を移して、同国産のさまざまな石をやはり独自の商品名で世に出した。そのうちシナゼツ(シナバー・アゼツライト)、アメイゼツ(アメシスト・アゼツライト)、サウラライト(ニュージーランド・アゼツライト)はシリーズに属するもの、すなわち、同じアゼツライトの周波数(波動)を保持するものとされている。

本文中で話題にした「淡いピンク色をした小さな磨き石」アゼツライトについては、どういう出自のものなのか今となってはよく分からない(コロラド産のピンクアゼツライトとは別のもの)。アゼツライトの中で私が多少なり気になったのはこのタイプだけなのだけれど… (2019.9.7)

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