7.白鉛鉱  Cerussite  (モロッコ産ほか)

 

 

見た目は、きゃしゃだけど、成分が鉛だから、重たいんだ。

白鉛鉱 −モロッコ、トゥーイシット(トゥーアシット)産

イラン、アナラック、ナカラク鉱山、200mLv. Vein #5 産

 

 

鉛の化合物には、白鉛鉱、緑鉛鉱褐鉛鉱青鉛鉱紅鉛鉱など、色名のついたものがたくさんある。 白鉛鉱はその名の通り、白色半透明−無色透明のものが多い。この鉱物の特徴は結晶形の多様さで、板状だったり、粒状だったりする他に、双晶して六茫星形の貫入双晶となるものもある。それがさらに発達すると肉眼サイズの雪の結晶のような美しい幾何学模様が現われる。
成分の鉛が屈折率を高めるので、無色透明のものはねっとりとした虹の煌めきを見せる。やはり鉛のために重量感がある。持ち重りのする標本は、それだけでありがたい気分になる。


追記:イラン中央部の町アナラックのあたりは、かつて盛んに鉛採掘が行われた鉱山地域だった。しかし1970年代初にはすでに衰退し、商業的に稼働しているのはナカラックただひとつであったという。アナラックの北約50キロにあり、知名度は低いものの、白鉛鉱標本の産地としては当時から世界でも指折りの鉱山だった。鉛鉱石、方鉛鉱、白鉛鉱は白亜状の石灰岩中に脈をなして現れる。鉱脈の巨大な裂け目に白鉛鉱の三連貫入双晶が群生をなし、そのひと群れは 12cmほどの大きさがあったという。
2000年の12月に現地を訪れたドイツの採集グループは数百点の標本を採って、翌年の鉱物ショーでお披露目した。鉱山の200mレベル、5番坑(Vein #5)に出た花弁状ないし雪華状の美麗結晶で、日本にも(リーズナブルな価格で)随分入ってきた。下の画像はその時のもの。デクロワゾー石後の仮晶やモリブデン鉛鉱を伴う標本も出たという。
最近では2012年のクリスマス直後に巨大な晶洞が発見されたというニュースがある。ナカラック産としては最良の雪華標本が出て翌年のツーソンショーの目玉となった。2013年には別の晶洞から晶癖を異にする結晶が発見された。現役の標本産地と考えてよさそうである。(2016.12)

cf. No.525 白鉛鉱

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