529.青鉛鉱 Linarite (USA産)

 

 

Linarite with Gypsum

青鉛鉱と石膏(無色透明)
−USA、AZ、マンモス・St.アンソニー鉱山産

Linarite on Fluorite

Linarite 青鉛鉱

方鉛鉱上のリナライト(母岩は蛍石) −USA、NM、ビンガム、ブランチャード鉱山産

 

呪文:PbCu(SO4)(OH)2。 鉱物名:青鉛鉱。
でも正確に表現しようとするなら、青鉛銅鉱と言うべきか。いや、青銅鉛鉱?
美しい青色は愛好家のあこがれの的。普通はあまり大きいものは出なくて、インクが滲むようなビビッドな青色のちっこい結晶やシミが、母岩の上にちょんちょん乗っかっている。
銅の炭酸塩である藍銅鉱や、銅の硫酸塩たんばんにも似るが、鉛を伴わない銅鉱床には生じない。その分希産であるということ。藍銅鉱は色目がやや暗く塩酸で発泡することで、たんばんは水に溶けることで区別することが出来る。金属鉱脈等の中に産するものは、硫化鉱物が分解して生じた硫酸が方解石などに作用して二次的に生じることが多い。

上の標本は初めてツーソンに行った時に買った。
事前情報が少なくて、行けばなんとかなる式に現地入りしたのだが、米ドルの現ナマをあまり用意していかなかったのは失敗だった。着いてからでいいやと思っていたら、両替してくれる場所を探すのに随分手間がかかった。それはいいとしても、一日に交換出来る限度額がかなり低く抑えられていた。それも平日の決まった時間にしか出来ない。参った。
ショーでの売買は現金が基本で、カードは断られるか嫌がられるか、あるいは別に手数料をとられる。実弾がないばかりに売ってもらえない標本がいくつもあった。日本円は当然受け取ってもらえない。つらいものでしたヨ。
この標本は新宿ショーでもおなじみの標本商さんで手に入れた。「たった○○ドルの標本だよ。カードだと手数料5ドルもらわないといけないけど、いいの?もったいないよ」と3度くらい言われて、そのたび、「いいんです」と告げてやっと包んでもらった。フランクなお店の人に気の毒そうに手渡されたのをありありと覚えている。
これを教訓に次の時はちゃんと米ドルキャッシュを用意しましたとも。

標本を紹介するとき、僕は過去の思い出を語る傾向がある。それは郷愁に浸るのが好きだからかもしれない。
15年ばかり前、サントリーのCMに「恋は遠い日の花火ではない」というフレーズがあった。過ぎた昔の思い出ではなくて今ここに息づいているよ、というメッセージらしい。
このステキな表現を拝借すると、私にとって鉱物は「遠い街の花火である」ような気がする。その遠さと非日常性がいいのですヨ。
あこがれは、ほのかでなくっちゃ。そして、ひそやかに語るものでありたい。

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