6.珪孔雀石 &孔雀石 Chrysocolla (ザイール産) |
「ジュラシックパーク」の著者、マイケル・クラントンに「コンゴ」という冒険小説がある。コンゴというのは、アフリカ中部を流れるコンゴ川流域の、密林に包まれた人跡未踏の地を、畏怖とある種のノスタルジー(スタンレーやリビングストンの暗黒大陸時代の懐旧)をもって呼ぶのに使われる言葉で、現在のコンゴ共和国そのものを指すわけではない。
どちらかというと今のザイールのシャバ州、つまりこの標本の産地のあたりこそ、かつて数々の冒険が繰り広げられた「コンゴ」の表舞台だった土地なのだ(旧ベルギー領コンゴにあたる)。
小説「コンゴ」は、密林の奥に埋蔵されている、特殊な半導体的性質を持つダイヤモンド(タイプUb)を探しに行く話である。ハイテクを駆使した資源探査の片鱗を味わいたい方には、ご一読を勧める。ザイールからは、銅やらウラン鉱物やら、さまざまなレアアースメタルが採れるが、ダイヤモンドも大量に採集されており、主に工業用途に用いられている。やや古いデータだが、1985年度のダイヤ総採鉱量に対し、ザイールは3割を占めて堂々の世界第一位を誇っている(9割が工業用)。小説に出てくる不思議なダイヤが本当に採れるのかどうか知らないが、ひよっとして何が採れるかわからない、と信じさせるところが、いかにも「コンゴ」である。(1999.3)
…と、調子よく書いたのだが、調べてみると 97年の5月にザイールは国名を変更し、99年現在、「コンゴ民主共和国」となっていた。コンゴという言葉を捨てきれなかった誰かが、再び、この一帯を名実ともにコンゴとしたのである。まったく、何があるかわからないところが、いかにもコンゴだ、と付け加えておきたい。
また、ダイヤモンドの産出量だが、1992年の統計では、天然ダイヤの4割が、86年から本格操業を始めたオーストラリア産で占められ、ザイール産は半分の2割弱という数字となっている。これは、ザイールからの産出が減ったというより、オーストラリアからの新たな産出がいかに膨大であるかを示すものだ。95年の統計によれば、世界の総産出量1億カラットに対し、オーストラリアからは4,000万カラット、ザイールからは1,700万カラットとなっている。(1999.3)
cf. No.101, No.263 珪孔雀石 No.96, No.725, No.726 孔雀石 No.230 アズロマラカイト