392.異極鉱 Hemimorphite (中国産) |
異極鉱の代表的な産状のひとつはぶどう状で、上の標本はこれに当る。鮮やかな青は副次成分に銅を含むため。アクセサリー用に磨かれることもあるが、私は原石のままのが好き。菱亜鉛鉱に似ているが、酸に溶けない。
中国からは、2年ほど前、あられ石を着色した類似の標本が本鉱として出回ったことがあり、大阪のミネラルショーでも、いくつものお店が気づかないで取り扱っていた。
ちょうどNo.167のあられ石に似た標本で、水で洗うと色落ちしたこと、人気のあった青色異極鉱を騙ったことで悪評を被ったが、あられ石としてみれば、けして悪い標本じゃなかった。
部分的に先の尖ったトゲ状というか針状の結晶がより集まって、あられ石らしいギザギザの尖塔を作っている標本が多く、それは異極鉱の結晶形としては異例だから、大勢の愛好家が最初から不信感を抱いていた(と思う)。
前述のショーの時、あるお店は「ヘミモルファイト」と大書きした紙をガラスケースに貼っていたが、手伝いにきた某ベテランコレクターは、標本を見るなり無造作にはがしてしまった。
自形結晶の異極鉱は、例えば2番目の標本のように、平板状の結晶が扇形に散開するのが典型的で、ときに扇が開ききらず、板の面が重なりあって、片側にジャバラの寄ったアコーディオンのような形に集合していることもある。下の標本がそれ。
補記:中国産の青色あられ石は、その後業者さんの間では「銅(硫酸銅)を含む青色の地下水に浸って着色された」(天然だろう)という説が定着したそうだ。自然にそうなったのか、故意にそうしたのかは不明。それにしても綺麗な青色だった。
雲南省産の標本は90年代前半、中国市場が開放されて鉱山開発が盛んになり始めた頃から西側に出回ったもので、明るい青色の異極鉱は従来知られていたイタリア・サルジニア島産の薄青色標本を凌駕する美しさを持っていた。詳細な産地は不明だが、麻栗坡県、文山、摩館、などの地名が標本ラベルに付属することがある。
cf. No.123 追記
補記2:サン・アントニオ鉱山は 1983年にバスケット・ボール大の晶洞からオハエラ産に似た良晶を出したことが記録されている。画像は 2004年に入手したものだが、その後 2011年6月に出た標本は「従来なかったタイプで、淡緑色〜淡青色の微結晶が球顆状に集合、あるいは2cm までの扇状に展開する」との報告がある。