800.孔雀石 Malachite (ロシア産) |
私が気に入ってる標本の一つです。ロシアのウラル地方はかつてかなりの量の孔雀石(マラカイト)を産出して、これを使った細工物が作られました。しかし今、ウラル産の良標本を手に入れようと思うと、なかなかに機会がありません。もちろんお金に糸目をつけなければ別ですが…。ともかく、基本的に昔の標本を探すことになります。古い標本を大量にストックしているのは博物館とか大学とか研究機関、由緒ある理科教材店などです。こういうところが換金ないし交換で蔵出ししたものが市場に回ってくると、我々のような者にも機会が訪れます。
というわけで、この標本はイギリス自然史博物館の鉱物学部門から。ラベルには
probably (十中八九、かなりの確からしさで、といったニュアンス)つきで、ウラルとあります。詳細な産地は分かりませんが、おそらくメドノルジャンスカでしょう。
ある標本商さんに言わせると、孔雀石はまったく人気のない商品で、いいものを並べても、ちいとも売れやしないそうです。コンゴ産があまりに大量に出回っているので、ありふれてるし、いつでも簡単に手に入ると思われているのでしょう。でも、100年後には手に入らないかもしれません(って、生きてないか)。もちろん、良さを感じないなら手にいれる理由もないわけですが…。
この標本は模様が綺麗で、孔雀石にしては硬くて(シンター質)、それに私はウラル産と思うだけで嬉しくなります。そんな思い入れのある人は愛好家の中でも少数派でしょうけれど、しかし自分が持ってる標本の値打ちは、それぞれの愛好家が心の中でひそかに決めればいいことだと思ってます。といいながら、人にも見てもらいたかったりして(共感してくれる人があってほしい)。