230.アズロマラカイト Azur-malachite  (コンゴ産)

 

 

孔雀石と藍銅鉱(スライス研磨面)−コンゴ産

Malachite 孔雀石 マラカイト

目玉模様のマラカイト(研磨面)−コンゴ、カタンガ、カパタ産

 

目玉模様の邪眼除けには、No.229のアイ・アゲートのほかに、古くエジプトにホルスの眼を象った意匠、中近東にメドゥサの眼を象ったガラス・ビーズ、インドやチベットに目玉を描いたジー・ビーズなどがあり、同心円模様の孔雀石(マラカイト)も、同じ目的で使用された形跡がある。
イタリアではこの種の石は孔雀の尾羽に似ていることから「ピーコック・ストーン」と呼ばれ、三角形に切って銀を被せた護符がベトナ地方などで使われていた。ちなみにキウシのエトルリア期の墓所から出土した三角ガラスの3つの角は、さまざまな色のガラスで目玉が作られており、邪眼除け信仰がかなり古くからあったことを覗わせる。
この国では(雄の)孔雀の姿を彫った護符も沢山作られて、やはり邪眼除けに用いられた。孔雀は太陽神の保護を表し、その勇猛果敢な性質から弱者(特に女性や子供)を悪霊から守るものとされたらしい。それと関係があるのか、ゆりかごの中に孔雀石を入れておくと悪霊が近づかず、赤ん坊はすやすや眠ることが出来るという俗信がヨーロッパにはある。
インドでは孔雀はむしろ魔鳥であり、尾羽の目玉模様で人に魅入り、たぶらかすと思われていたから(坂田靖子の「孔雀の庭」はその伝承が下敷き)、所変われば品変わるものだ。

上の標本は、アズロマラカイト(藍孔雀石)と呼ばれる石で、緑色のマラカイトと青いアズライトとが層状に析出したもの。色は違うが両者の化学成分は近い。アズライトは風化するとマラカイトに変わることがあるというが、この標本は単に成分の微妙な濃淡(原鉱液の酸性度?)によって、あるいはマラカイトになり、あるいはアズライトになったと思われる。単独のマラカイトより鮮やかな目が出て、より強力な護符になりそう…。

補記:アズライト(藍銅鉱)はマラカイト(孔雀石)よりやや産出が少なく、その原因のひとつは前者の生成により高いCu2+濃度が必要なことが挙げられる。すると、鉱液中の銅濃度が高い間は藍銅鉱が生じ、下がってくると孔雀石が出来る、銅分が補給されるか溶液の濃縮が起こると再び藍銅鉱が生じる…という繰り返しが想定される。
またアズライトからのマラカイト仮晶は生じやすく、マラカイトからのアズライト仮晶は生じにくいということができそうだ。

cf. No.96, No.725, No.726, No.800, No.801

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