838.ローブン石 Lavenite (ノルウェー産)

 

 

 

lavenite

ローブン石(淡褐色)、「バーケビ閃石」(黒色)、母岩はかすみ石
- ノルウェー、ランゲスンツ、ローブン島産

 

 

大小あわせて数百の島が浮かぶランゲスンツ・フィヨルド。ローブン島はその南の湾口部にちんまり顔をのぞかせた細長い小島である。google マップでみると長辺 50m ほどにしか見えないが、文献に 80x40m とある。潮汐で大分変化するのかもしれない。海上に高く突き出た丸みのある長い形がこの地方に見られる納屋のようであることから、ローブン(納屋)島と呼ばれるそうだ。全島が灰色の霞石閃長岩ペグマタイトで出来ており、島の北側にこれを載せる(貫入を受けた)黒色の玄武岩の基部が見られる。

1830年前後、ブレヴィクに住んでいた牧師 E.M.T.エスマルクがリューコフェン石やエジリンを発見したことで注目された(cf.No.836)。W.C.ブレガーはこの島に約35種の鉱物を記載したが(1890年)、今日では50種が知られている。ちなみにランゲスンツ・フィヨルド地域全体では約185種を数える(26種の原産地)。

ローブン石はブレガーがローブン島で発見した種で、もちろん島名に因んでいる(1884年?)。黄色〜茶褐色で自形は長柱状の単斜晶系結晶をなす。ヤンセンの図鑑に組成 Na2MnZr(Si2O7)(O,F)2 と簡明に載っているが、Dana 8th に (Na,Ca)2(Mn,Fe2+,Ca,Ti)(Zr,Ti,Nb)Si2O7(O,OH,F)2 とあるように、カルシウムやチタンなど他の元素を取り込んで、成分はかなり変化しうる。へき開{100}に明瞭で、またこの面を対称に双晶していることが普通。ヴェーラー石グループの一つ。このグループの物性は互いに近似するが、ヴェーラー石の自形は板状が一般的で、色調は蜂蜜黄色。モサンドル石の色調はローブン石に似るが、粒状で産することが多く自形結晶はあまり発達しない。という(私には分からない)。

ローブン島は小さな島ながらアルカリ岩起源の希産鉱物の宝庫で、新種も7つ出ていることから19世紀には盛んに採集が行われ、島のあちこちに当時の発破の跡が残っているという。ランゲスンツの採集熱は20世紀後半になって再燃したが(その頃から本土でラルビカイトの採掘が大がかりになっていった)、フィヨルド内の島の多くは採掘が制限されている。ローブン島は1970年4月以降、岩石標本の持ち出しが禁止された。ただしオスロの鉱物地質博物館だけは調査名目での採集が認められており、そのおかげかどうか、今も時折この歴史的産地の標本が出回ることがある。

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