876.スコレス沸石 Scolecite (インド産)

 

 

 

Scolecite スコレス沸石

スコレス沸石 - インド、マハラシュトラ、ナシク産

 

 

沸石は、ナトリウムやカルシウム、カリウム、バリウムなどのアルミノ珪酸塩鉱物で、空隙の多い(大きい)結晶構造を持ち、多量の水分を含んでいる。マグネシウムを成分とする沸石は少ない。

成分的には長石に水分が加わったようなものだが、これより珪酸分に富む種もあるし、乏しい(準長石的な)種もある。また、ある種に分類される物質のうちにも、アルミと珪素の比率が理想組成に近いものとそうでないものがあり、外れる場合は例えばナトリウムとカルシウムとの置換(及び空位)によって電荷のバランスを補償した組成になっている、と考えられる。なお組成中のアルミと珪素の数の和と、酸素数との比は 1:2である。

スコレス沸石(スコレサイト)はわりと普通に見られる沸石で、3分子の水(沸石水)を含むカルシウムのアルミノ珪酸塩である。組成式 Ca(Al2Si3O10)・3H2O。珪酸分に乏しく、玄武岩などの空隙に産することが多い。
ソーダ沸石や中沸石とは外観も物理的・化学的性質も似ている。3者の比較については、No.439 に記した。西インド産の沸石がヨーロッパに紹介された当初に記述されたプーナ石は、ほどなくスコレス沸石と鑑定され、長い議論の末に中沸石に収まった。その経緯は No.445に記した。

西インドの沸石相の分布は、@濁沸石が主体の層、Aスコレス沸石が主体の層、B輝沸石が主体の層の3つに大きく分けられ、土地の高度と関係のあることが指摘されている。ムンバイを含む沿岸地域は@が、ガーツ山脈から内陸に上がったプネーは海抜 560m の高地だが、周辺の丘陵から内陸の高地に向かってはBが支配的になる。中間の高度の土地にAが見られる。基本的に西から東に@→A→Bと変化する。ただし層の境界高度は広域にわたって一律というわけではない。
画像はムンバイ北東の宗教都市ナシク産のスコレス沸石だが、ナシク(海抜580m)はちょうど@からAに変わる層間で、@の分厚い層の上を薄く覆った溶岩帯がAになっている。ナシクの東方で次第に土地が隆起してゆくにつれ、Aの層厚が増す。

濁沸石は組成式 Ca(AlSi2O6)2・4H2O。ワイラケ沸石 Ca(AlSi2O6)2・2H2O に対して沸石水の含有が少ない種と言える。一般に沸石は低温で生成するものほど沸石水を多く含む。両者の場合、200℃以上の温度で生成するとされるワイラケ沸石より、濁沸石はやや低温の環境で生成するとみられる。
輝沸石 Ca(Al2Si7O18)・6H2O はさらに低温の環境に生成する。ちなみに広域変成岩に含まれる輝沸石は、生成後に環境温度がいくらか高くなると濁沸石と石英とに分解する。Ca(Al2Si7O18)・6H2O → Ca(AlSi2O6)2・4H2O + 3SiO2+ 2H2O
またスコレス沸石は濁沸石から石英1分子を引いた組成に相当する。
Ca(AlSi2O6)2・4H2O vs  Ca(Al2Si3O10)・3H2O+ SiO2+ H2O
そこでこの3層の分布は、生成時の温度環境や熱水中の珪酸分の濃度(これは溶液のアルカリ度に関係する)との関連性が示唆されている。

スコレス沸石を記載したのはゲーレンとフックスで、1813年にドイツ産の標本について報告した。
この時調べた標本の中に、吹管中で熱すると巻き上がるように変形して、まるでミミズか芋虫のように見えるものがあった。そのためこの種の生物を指すギリシャ語スコレクスに因んで種名をつけた。必ずカールするとは限らず、Dana 6th は sometimes (時々そういうことがある)と注釈している。カールしないからスコレス沸石でない、とは言えないわけだ。
MR34-1 には、加熱によって曲がる性質はスコレス沸石にあってソーダ沸石や中沸石にないもので識別手段になる、と書かれているが、ほんとうか? という気がする。

スコレス沸石は単者晶系の構造を持つが、自形結晶は正方晶系や直方晶系に近い。細長い柱状になることが多く、大きなものは数十cm 長に達する。西インドではナシクとプーナの間(南北に帯状)に産して、特にジュナール Junnar 産が有名(双晶して、いわゆるフィッシュテール/矢筈/ V字形の端面を示す)。透明なものが多い中沸石に比べて、半透明〜不透明な場合が多い。また一点を中心とする扇状に集合することが多いが、中沸石のような完全放射球状は少ない。

スコレス沸石・中沸石・ソ−ダ沸石の厳密な区分は実験室的な分析手法に拠らなければならないのが現代の鉱物学であるが、標本市場的に言えば、画像のような外観の西インド産の標本は、単に外観によってスコレス沸石と標識されて市場に出回る。我々も異を唱えたりしない。
この種の分析は基本的に破壊試験だから、標本を温存してかつ厳密な種名を知る、ということはそもそも出来ない相談なのだ。熱してカールさせるのも論外。

cf.ヘオミネロ5

鉱物たちの庭 ホームへ