445.中沸石 Mesolite (インド産)

 

 

Mesolite

中沸石 -インド、プーナ、パシャン・ヒル産

 

パシャン・ヒルのもう一つの名物だった中沸石。こういう標本はやっぱり発破をかける採石場では採集が難しく、手掘りでこんこん丹念に割りとっていかなければならない。
保管にも細心の扱いが必要で、うっかり触ると、ぱりんぱりんと細い細い針が折れてゆく。「手の上で転がしただけで、放射状の中心から結晶がはずれるよん」、とMR誌に警告されている。その代わり、プーナ産に匹敵する標本は世界のどこを探したってない、とも持ち上げられている。
だから入手したら、木工用ボンドなどでアクリルケースに固定し、決して動かしたり触ったりしないに限る(←私も随分はずしたもんですが)。

インドの沸石に関する最初の鉱物学的出版物は1831年にH.J.ブルックスが著した「フィロソフィ年報」とみられていて、その中に著者のブルックスが標本商ヘンリー・ヒューランド(輝沸石 Heulandite を献名された)から入手したプーナ産の淡緑色の魚眼石と、これに伴う ”Poonahlite”(プーナ石) が取り上げられている。彼は後者を新種になると考えたのだが、同じ年、やはりヘンリーがオックスフォード大学に納めた同様の標本は、最初スコレス沸石と鑑定された。ところがグメリンやケンノット、ピーターセンといった鉱物学者たちの間で鑑定を巡って意見が割れ、長々と論争が続けられた。結局結論は出ず、最終的にバウマンが中沸石と決定したのは1906年のことだった。以来、プーナの名を冠した石はまだ現われない。
中沸石の名は、その成分がソーダ沸石とスコレス沸石の中間に値することによる。(No.439参照)

インド産の針状の沸石はスコレス沸石が多いそうだが、ソーダ沸石や中沸石ももちろん産出して、ときにはスコレス沸石の結晶の中心部が中沸石やソーダ沸石になっていることもあって、また3種そろって単結晶内に共存する場合もあるらしい。しかし、「スコレス沸石と違って、双晶はまだ見つかっていない」そうだから、これもひとつの鑑定上の目安になるだろう。

補記:スコットランド、スカイ島 Talisker産の羽毛状集合ないし放射状の本鉱を Cotton stone 綿石と呼んだ。(cf.No.267 コットン・ボール)

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